備後地域で愛される逸品を知る。

2024.06.15 2024/07/05

【鷺島みかんジャム】みかんの花の香り感じる!濃厚な味わい

瀬戸内の離島で手作りされる「鷺島みかんジャム」

「ここから眺める海は最高でしょ!私はこの島が大好きなんですよ」満面の笑顔でそう語る女性は、「果遊工房」を営む引地 典子(ひきち のりこ)さん。
広島県三原市の沖合に浮かぶ「佐木島(さぎしま)」に暮らし、自ら育てたみかんをはじめ、甘夏やレモン、青みかんを使用したジャムを作っています。

インタビューに答える引地 典子さん
果遊工房の引地さん
お話していると佐木島への愛情が伝わってきます

引地さんに案内されたみかん畑からは、穏やかでキラキラと輝く瀬戸内海が一望できます。

ここは、広島県三原市佐木島。
三原港より高速艇でわずか十数分のところに位置する島で、「日本一、新幹線駅から近い島」とも呼ばれています。本土より橋がない離島ですが、それゆえに島ならではのゆったりとした時間が流れ、忙しい日常から少し距離を置くことができる場所。のんびりとした心地良い空気に包まれています。
佐木島は、人が暮らし始める以前、鳥の「鷺(さぎ)」が多く生息していたことから、「鷺島」と表現されることもあり、現在でも人と自然が共存しています。

海に浮かぶ鷺島
自然豊かな佐木島
取材で来たのにのんびりしたくなってきました(笑)
島の港に船が到着するシーン
私たちは三原市の須波港からフェリーに乗船
いよいよ佐木島に到着です

そしてこの島で盛んなのが柑橘栽培。中でも、引地さんが栽培する柑橘は、完全無農薬で除草剤も一切使用せず、島の自然にしっかりと根を張り育ちます。

今回紹介する『鷺島みかんジャム』はそのみかんを使い、引地さん自ら手作りしたジャム。瀬戸内でしか味わえないおいしさがギュッと濃縮された「逸品」です。

柑橘栽培に適した佐木島。島への愛情が新しい風を生む

瀬戸内といえば柑橘をイメージする方も多いでしょう。特に最近はレモンが有名ですが、みかんや甘夏、はるみ、清美など、その品種は数十種にも及ぶと言われています。
ここ佐木島でも昭和初頭より柑橘の栽培が始まり、島全体をオレンジ色の畑が覆います。

佐木島が栽培に適している理由は主に2つ。
まず、土壌が花崗岩で形成されているため水はけが良く、雨が降っても滞留しないため、実が水っぽくならず濃厚な甘さに育つこと。
さらに、日当たりの良い斜面で栽培されたるため、太陽の光と瀬戸内海の潮風をたっぷりと受け、果肉一粒の中に旨味がギュッと濃縮されます。

実がたわわになったみかんの木
美味しい柑橘が育つのにぴったりの環境なんですね!

引地さんが柑橘栽培に携わるようになったのは、隣の尾道市よりこの島に嫁いできてから。サラリーマンの家庭に育った引地さんは、当初、農機具の名前すらわからなかったと言います。

「その頃は、義父を中心に栽培を行っていました。農業の経験も知識もなく戸惑うことも多かったんですが、一から教え込まれましたね。本当に厳しかったですよ」

とにかく曲がったことが嫌いだったお父様から徹底的に柑橘栽培の手解きを受けた引地さん。10年が過ぎ、ようやく一通りの仕事ができるようになった頃、突然お父様が他界します。

「これからどうしようか途方に暮れました。夫は出張が多い会社員でしたので、ほとんど頼ることもできなかったですし、当然、畑は私が引き継ぐことになりました。ただ、義父が指導してくれたおかげで、なんとかやっていく覚悟もできたんです」

俯瞰で見たみかん畑
お義父さまから突然引き継いだ畑
今日まで大切に守られてきたんですね
みかんの花
取材に伺ったのは5月
白くてかわいいみかんの花が咲いていました

それ以降、農業はもちろん、さまざまな会合にも一家を代表して参加するようになった引地さんは、地域との繋がりも強くしていきます。
ある時、島の若者から「楽しい農業をしてほしい」という言葉を掛けられたそうです。その言葉を機に、「自分なりの農業で、この島に新しい風を起こしたい」と思うようにも。
未経験だった柑橘栽培は、いつしか引地さんの思いを表現する手段になり、同時に島への愛情も深まっていったそうです。

完全無農薬、除草剤不使用のみかんを使ったジャム作り

引地さんが育てる柑橘は完全無農薬、しかも除草剤も一切使用せず栽培されています。自然相手のため、当然、一雨ごとにぐんぐん伸びる草や、柑橘に害を及ぼす虫、さらにイノシシやカラスなどへの対策も必要に。

「草刈りだけでも大変なんですよ。でもね、実は私、草刈りが大好きなんです。きれいに刈った後は本当に爽快。それに、手を掛けただけ驚くほど甘い柑橘が育つんです」

実際、引地さんが育てたみかんは糖度20度越えが当たり前。一般的に、おいしいと言われるみかんの糖度が12度ですので、引地さんのみかんがいかに甘いかがわかります。もちろん、その他の柑橘の甘さも格別。そのおいしさを求め、毎年、全国のファンからの引き合いが後を絶たないと言います。

たくさんのみかん
引地さんのみかん、いつかそのままでも食べてみたい…!

「でも、天候やイノシシの被害などによって、数箱の柑橘しか収穫できない年もあるんです。良い時もあれば悪い時もあって、毎年どうなるかわかりませんが、これまでなんとか守ってきたこの畑で、やれるだけのことをやっていこうと思っています」

そう話す笑顔からは自信も溢れています。

さて、それら収穫したものをご主人の知り合いにお土産として渡していた引地さんですが、日持ちがするという理由からジャムを作りはじめたそうです。そのおいしさはすぐに評判になり、「島の旬を食べんさい」と名付けて販売も行うように。

「収穫した柑橘が甘いので、作りはじめた頃は果汁の10%相当の砂糖のみで仕上げていたんです。ですが、熊谷喜八シェフのアドバイスで砂糖の量を見直し、おかげでよりおいしいジャムが完成しました」

皮をむかれザルに入ったみかん
ジャムにするために一つ一つ手で皮をむきます
寸胴鍋でジャムに加工されたみかん
焦げ付かないよう混ぜながらじっくり加熱するそうです
とっても大変そう…!

10年程前より「三原市ふるさと大使」を務める日本料理界を代表する、熊谷喜八シェフ。
三原市の素材を使った商品開発を支援すると同時に、既存の商品へのアドバイスも行っています。その際、熊谷シェフの目に留まった引地さんのジャム。よりクオリティーの高いものにするために、工房まで足を運び、砂糖の分量など細かく指導してくださったと言います。

「最初は、『そんなに砂糖を入れるんですか?』と、熊谷シェフ相手に物申したんですよ。(笑)でも、アドバイスに従って作ってみると、これがとてもおいしくなって。熊谷シェフの指導のおかげで、より多くの方に手に取っていただけるようになりました」

今では、佐木島を訪れた方のお土産としても喜ばれる、この島を代表する特産品になったそうです。

みかんの花の香り感じる濃厚な味わい「鷺島みかんジャム」

今回紹介する『鷺島みかんジャム』。この他に甘夏、レモン、それから栽培時に摘果した青みかんを使用したジャムがあり、ラインナップは4種類です。
中でも、糖度20度を超えるみかんを材料にしているのが『鷺島みかんジャム』。一つひとつ丁寧に皮をむき、ジューサーにかけたみかんをじっくりと加熱しジャムに仕上げています。

320g入りの瓶には、地元で活躍するデザイナーによる、島と瀬戸内海の風景をイメージさせる色鮮やかなラベルが施されています。中央に描かれている模様は、みかんと佐木島の名前の由来となった「鷺」に見立てているそうです。

みかんジャムの瓶
鮮やかなみかん色と品のある深緑の組み合わせがとってもおしゃれです

では、早速蓋を開けてみます。
鼻を近づけてみると、爽やかなみかんの香りがはっきりと感じ取れます。

スプーンですくって、まずはそのまま。
圧倒的な甘さに驚きです。もちろんグラニュー糖は使用されていますが、それを遥かに超えるみかんそのものの甘み。まるで、みかんの花の香りをそのまま閉じ込めたような、濃厚な味わいが広がります。さらに、ハチミツに近いような風味もあり不思議。今まで食べてきたジャムとは比べものにならないほど異次元のおいしさです。

瓶からジャムをスプーンですくう様子
みかんの美味しさがそのままぎゅっと詰め込まれています

引地さんが手間を惜しまず、丹精込めて育てたみかんだからこそ、このおいしさが完成したのだと実感。しかも、ジャムを口に入れた瞬間、柑橘畑から見下ろす瀬戸内の風景が思い浮かび、心も一緒に満たされていくかのような感覚に。間違いなく、「逸品」と呼べるジャムです。
色々とつけて楽しむ前に、まずはそのまま食べていただきたい。引地さんが手掛けたジャムのおいしさを、ダイレクトに味わってみてください。

もちろん、パンに塗るのも、ヨーグルトに添えるのも良し。パンやヨーグルトがジャムの華やかな甘さと合わさって何倍にも美味しく感じられます。どちらかというとジャムを主役として楽しめる食べ方です。
塩胡椒でソテーした鶏肉や豚肉の上に乗せ、蒸し焼きにしていただくのもおすすめです。
ジャムとお肉?と思われるかもしれませんが以外にも相性ばっちり。フルーティーな香りとお肉の旨味が合わさってとても上品な味わいに。アルコールと一緒に頂けばいつもの食卓が優雅なひとときに大変身です。

パンに塗ったみかんジャム
シンプル×シンプルで間違いない美味しさ
皿に盛られた野菜と鶏肉の蒸し焼きの写真
鶏肉料理にもソースとして!
ぜひ色んな食べ方で楽しんでください

今回紹介した『鷺島みかんジャム』の他、甘夏、レモン、青みかんを使ったジャムも、一つひとつはっきりと異なる個性豊かな香りと甘さを堪能でき、それぞれにファンがいるそう。中でも「青みかんジャム」はテレビレポーターが「初恋の味」と表現したことから、問い合わせが殺到したこともあるそうです。

「島の皆さんや、いつもリピートしてくださるお客様に支えられて、これまで20年以上ジャムを作り続けることができました。本当に感謝しかありません。
これからですか?そうですね、人生100年時代と言いますので、これからさらに20年は続けられるかもしれませんね(笑)」

できるだけ新鮮なものを食べていただきたいとの思いから、一度に大量を作らず、必要な分だけをこまめに作るというこだわり。日中は柑橘栽培に汗を流し、ジャムを作るのは夜になってからだと言います。

「夜はじっくりジャム作りに専念できる私だけの時間。だから、毎日夜になるのが楽しみなんですよ」そう笑顔で話す引地さんから、たくさんのパワーをいただきました。

現在『鷺島みかんジャム』は、通販サイト 楽天市場(ふるさと納税)、さいさいマルシェで購入が可能です。また以下のお店でも購入できます。
瀬戸内の逸品ジャム、ぜひ味わってください。

  • 三原市:ニチエー(一部店舗)、道の駅 神明の里みはら、空の駅 オーチャード、みはらまちづくり兎っ兎、三原国際ホテル
  • 広島市:ひろしま夢ぷらざ
  • 東京都:ひろしまブランドショップ TAU

工房の紹介

果遊工房
住所:〒723-0021 広島県三原市鷺浦町須波856