おくはち農園の奥田さんがプロデュースする「ストレートジュース」
「みかん栽培の修行中に飲んだジュースが感動的なおいしさだったんです。そのときから、『いつか必ず自分でも作ってみたい』と思っていました」
そう話すのは、祖父母が長年栽培していた柑橘畑を復活させ、みかんや紅八朔、不知火など約20種類の柑橘栽培に邁進する「おくはち農園」の奥田 高宏(おくだ たかひろ)さん。
2019年より広島県三原市木原町で柑橘農家を営み、併せて、それらを絞った果汁100%の『ストレートジュース』をプロデュースしています。
今回は、春真っ盛りのおくはち農園にお伺いし、「みかんそのままのおいしさを味わえるクラフトジュース」として人気沸騰中の『ストレートジュース』について、話をお聞きしました。
エンジニア出身、瀬戸内の柑橘畑で育てるこだわりのみかん
ここは三原市の東端に位置する木原町。瀬戸内海を一望できる山の斜面には柑橘の畑が点在します。
海沿いの道から望めるその景色は、瀬戸内ならでは。夏にはみかんの花の甘い香りが海沿いの街を包みます。
奥田さんはここ木原町で生まれ、幼い頃より祖父母が大切に育てた数々の柑橘を味わっていたそうです。もちろん、柑橘畑は格好の遊び場だったとか。みかん色に染まった斜面と、そこから見下ろす穏やかな海は奥田さんにとっての原風景とも言えます。
「ただ、祖父母も次第に年齢を重ねると体力的にも柑橘の手入れが難しくなって、70歳を過ぎた頃に引退しました。それ以後は引き継ぐ者もいませんでしたので、畑は放棄地同然になっていました」
奥田さん自身も、高校卒業後は地元を離れ機械工学を学ぶために大学に進学、エンジニアとして他県での就職を選びます。そして、7年が過ぎたある日、突然訃報が届いたそうです。
「90歳の祖父が亡くなったという知らせでした。久しぶりに故郷に戻り、家族や親戚で昔話になったんですが、そのときに皆んなの口から出たのは、『おじいちゃんと、おばあちゃんが育てていたみかんはおいしかったよね』という言葉。もう二度と食べられないんだ、と改めて意識しました」
振り返ってみれば、20年近く誰も手を入れていない柑橘畑。祖父母が丁寧に柑橘を育てていた頃の面影はなくなっていました。
「古い考えかもしれませんが、ふと、私がやらなければいけないと感じたんです。幼い頃からの記憶が蘇ってきて、祖父母が築いてきた畑を自分の手で復活させたいと思いました」
その後、会社を退職し、修行のために愛媛県八幡浜市の柑橘農家で研修をスタート。土づくりから栽培、収穫、出荷まで一連の流れを経験する中で、奥田さんは、体を動かす楽しさやそこから得られる充実感を味わったと言います。
現在、おくはち農園の圃場は1.8ヘクタール程。
就農以来、祖父母の柑橘畑を手入れし、新しい苗木を育てながら、同時に周囲の柑橘農家からも畑を引き継ぎ栽培を行っています。
「木の力、自然の力」をできる限り活かすという修行先で学んだ農法の中でも、特にこだわっているのが「草生栽培」。
畑にナギナタガヤという下草を敢えて生やすことで、なるべく除草剤に頼らない栽培方法です。もちろん、草刈りも必要ですが、刈った後の草を放置することで、それが栄養豊富な堆肥となり、微生物が生き生きと活動する土づくりに活かされます。しかも直射日光からも土を守ることで、土壌の温度を適温に保つことも可能です。
他にも木々の成長を確かめながら行う植物ホルモンを意識した剪定や、ミネラルの葉面散布、完熟期を見極めた収穫など、奥田さんのこだわりは随所に。
毎年新たな工夫を加えながら、おくはち農園ならではのみかん栽培をめざしています。
みかんそのままを搾汁、無添加の「ストレートジュース」
手間ひまをかけ、愛情たっぷりに育ったみかん。
これらを贅沢に使って作られたのがおくはち農園の『ストレートジュース』です。修行中に口にした果汁100%のジュースのおいしさが忘れられず、収穫初年度からジュース作りを開始。
「最初の年は、少しパンチが効いたジュースもありましたが、木の成長とともに優しい味わいになってきています」と語る奥田さん。
おくはち農園の無添加『ストレートジュース』には、ファミリーサイズ(720ml)とお一人サイズ(180ml)があり、それぞれで搾汁の方法を変えるこだわりっぷり。
ファミリーサイズは、インライン製法という技術で搾汁されます。外皮がついた状態のみかんを特殊なプレス機に一個づつセット、上から圧力をかけつつみかんの底に穴を開けて、果汁だけを絞り出す方法で、苦みやえぐみ等、余分なものが入らないストレートジュースに。
一方、お一人サイズは奥田さんが一つ一つ手作業でみかんの皮を剥いた後、薄皮が付いたみかんを裏ごししながら専用の大型機械で細かく砕きます。これを3回繰り返すことで荒い薄皮は除かれ、繊維質が含まれた栄養たっぷりのストレートジュースになります。
『ストレートジュース』とはその名の通り、原料をそのまま絞って作られた飲み物のことで、砂糖や水、添加物、保存料などを加えずに製造しているため、素材そのものの風味を味わえるのが特徴です。
また、みかんには抗酸化作用があるビタミンCが多く含まれています。一日2個程度食べることで一日に必要な所要量をカバーできるそう。
そのビタミンCには有害な活性酸素の働きを抑え、免疫力を高める働きがあり、風邪の予防効果や美肌効果が期待できます。
他にも疲労回復が期待できるクエン酸、便通の改善が期待できるペクチンなどが含まれていて体に嬉しい栄養がいっぱい。
しかしみかんの賞味期限はおおよそ2~3週間程度と短く、旬も限られます。一方、『ストレートジュース』の賞味期限は製造日から1年ほど。
「柑橘はどうしても秋から冬にかけてしか味わえませんが、ジュースを飲んでいただくことで、夏の暑い時期にも、おくはち農園の柑橘を楽しんでいただけます」
“蜜”を感じる濃厚な甘味!おすすめしたい「ストレートジュース」
さてここからは、実際にお一人サイズ(180ml)の『ストレートジュース』をいただいた感想をお伝えします。
手にとってまず目を引くのが、そのかわいらしいラベル。◯と△でデザインされた、おくはち農園のマークがデザインされています。
「オレンジ、黄色、緑、白の◯は、季節とともに成長していく柑橘を表しているのと同時に、八幡浜市の皆さんをはじめ、これまで支えてくださった方々との『縁』も表現しています」と奥田さん。
奥様と2人でデザインしたそうですが、ビビットな色合いが、瀬戸内の温暖な気候の下でのびのびと育つ柑橘の様子をイメージさせてくれます。
蓋を開け、グラスに注いだときに感じる爽やかな香り。そして鮮やかなみかん色。おくはち農園で育ったみかんのおいしさがそのままギュッと濃縮されているかと思うと、期待に胸が膨らみます。
そして一口。
まるで花の蜜か、はちみつを口に含んでいるかのような抜群の甘味と、後に続く柔らかな酸味。それらのバランスの良さが絶妙で、酸味が苦手という方でも抵抗なく飲めるはずです。
しかも、先にもお話したようにお一人サイズは果汁だけを絞り出しているので、一層濃厚な味わいです。つい、「みかんって、こんなにおいしかった?」と感じてしまうほど。
飲み進めるうちに、口に広がる味わいが優しさを増していくような感覚になるのも不思議。年齢問わず人気なのも納得です。
色、香り、味わいの全てから、おくはち農園のみかんが丁寧に育てられている様子が伝わってくる『ストレートジュース』。これまで味わってきたジュースの中でも、品質の良さが際立つ逸品です。
さらに、奥田さん曰く、冬場にはホットにしてもおいしいとか。寒い日にビタミンCたっぷりのジュースを飲めば、身体の隅々まで温まること間違いなしです。
今回紹介した『ストレートジュース』にはみかん以外にも、「はるみ」「不知火」がラインナップされています。
ちなみに、「はるみ」はみかんにも増して濃厚でまるみのある味わい。「不知火」は、後味のサッパリ感が心地良いジュースに仕上がっています。
柑橘栽培を始めて以来、耕作放棄地を中心に圃場を広げ、毎年200本ずつ苗木を植え続けている奥田さんに、今後の夢を聞いてみました。
「ここ木原町は、私が小さかった頃に比べると、畑もかなり減ってしまいました。高齢化や担い手の不足のため離農する方から、畑を引き継ぐことも多いんです。ただ、私の夢は、もう一度この木原をみかん色に染めること。そして、みかん栽培を通して木原を盛り上げていくこと。まずは、私自身がおくはち農園ならではの柑橘栽培を追求して、柑橘農家を生業にしていくことからだと思っています。そうすれば、農業に興味を持つ若い世代も増えるかもしれませんし、木原に移住してくる方も増えるかもしれません」
あくまでも、故郷である木原町にこだわる奥田さん。柑橘を育て、『ストレートジュース』を作り続けることで、木原の柑橘のおいしさを1年中届けています。ぜひ、皆さんにおすすめしたいクラフトジュースです。
現在、おくはち農園の『ストレートジュース』は公式ホームページの他、以下の店舗で購入できます。
- 三原市:道の駅みはら神明の里
- 竹原市:田万里家RICE DONUT
- 広島市:無印良品広島アルパーク、WITH YOU PLAN(広島ランデヴー)
- 尾道市:ONOMICHI U2