
猫のまち、尾道で誕生した新スイーツ「肉球レモンケーキ」
全国はもちろん、世界中からの観光客を魅了する尾道市。その数は、2024年の1年間で650万人を超えています。
レトロな街並みや、千光寺をはじめとする神社仏閣、サイクリストの聖地 しまなみ海道などその魅力はさまざまですが、とりわけ、猫好きが一度は訪れたい「猫のまち」として有名です。
まちを歩くと、路地裏からひょっこりと現れる猫たちに心癒される方も多いはず。カラフルな猫が石に描かれた「福石猫」が並ぶ猫の細道や、招き猫美術館もあり、猫をモチーフにした商品も数多くプロデュースされています。

今回紹介するのは、そんな「猫のまち尾道」で新たに誕生した猫スイーツ『まるにゃん肉球レモンケーキ』。猫推しの方を筆頭に、尾道を代表するスイーツになること間違いなしの商品です。
訪れたのは、意外にも「鰹節」を製造する「株式会社 まるじょう」。
この会社でレモンケーキがいかにして生まれたのか…?
開発を担当した、通信販売部門マネージャーの河本 暁美(かわもと あけみ)さんにお話を伺いました。

レモンケーキについて教えてください!
「弊社では、人と猫が一緒に楽しめる鰹節『猫節』を販売しています。数年前に、猫のまち尾道を象徴するような商品をと開発したんですが、そのときから、鰹節を使ってスイーツも作ってみたいと思っていたんです」
商品化の相談を持ちかけた先は、しまなみ海道の島「生口島」でレモンケーキを製造・販売している「株式会社 島ごころ」。尾道を代表するレモンケーキの店として不動の人気を誇ります。

広島の色んな所で購入できます
「ちょうどその頃、島ごころさんが尾道商業高等学校(※以下、尾商)の生徒たちに商品開発の授業を行っていたんです。尾商は、まるじょうの目と鼻の先にある伝統校。せっかくなら、生徒たちにもアイデアを出してもらい、3者共同でスイーツを作りましょうということになって、『まるにゃん肉球レモンケーキ』のコラボプロジェクトが動き出しました」
日本古来の調味料、鰹節を使った肉球型のレモンケーキ
近年では、若い方を中心に鰹節を使うことが少なくなり、素材の旨みを引き出す日本古来の調味料としての価値が充分に伝わっていない状況だとか。
そこで、尾商の授業に参加した河本さんはまず、鰹節から抽出した出汁を生徒たちに味わってもらうことからスタートしたそうです。

鰹節からとられた出汁は美味しいですよね~
「初めて口にする生徒も多かったんですが、『おいしい』という反応が大半でしたね。そうしたら、生徒のなかから『鰹節といえば、ねこまんま(猫に与える餌)だよね』という声が挙がったんです。すでに、スイーツの形状を「肉球」にしたいと考えていましたので、その意見には大きく後押しされましたね」

島ごころとの共同開発だったこともあり、「レモンケーキ」を作ることは既定事項。
まるじょうでは、鰹節をどの程度感じるレモンケーキにするのか、ということを中心に協議したそうです。
「会社内では、鰹節の風味を前面に押し出すのか、それとも、微かに感じてもらう程度に留めるのかで意見が分かれました。ただ、島ごころさんのレモンケーキのおいしさは折り紙付きでしたので、それを前提に『実は鰹節が入っている』というニュアンスをほのかに感じていただくような仕上がりを、とお願いしたんです」
発酵食材が鰹節の旨味を引き出す!島ごころの挑戦が扉を開く
一方、「鰹節」というスイーツとはかけ離れた素材を使ったレモンケーキ製作を依頼された島ごころ。その開発はどのように進んだのでしょうか?
島ごころの代表取締役社長、奥本 隆三(おくもと りゅうぞう)さんにお聞きしました。

普段なら出会わない食材の組み合わせをどう感じたんでしょうか
「最初にお話を伺ったときは、未知への挑戦を持ちかけられたなと感じましたね。ただ、せっかくなら地域を代表するスイーツを作りたいと思って、尾商の生徒たちも一緒に取り組んではどうかと考えたんです。尾道の会社と学校が共同開発することで、地元からも愛されるレモンケーキができるはずだと思いました」
とはいえ、鰹節の配合量にはかなり頭を悩ませたことも事実、と奥本さん。
「一歩間違えれば、鰹節とレモンケーキ、どちらの印象も悪くなってしまいます。今までにないスイーツを作りたいという思いはありましたが、鰹節の風味をどの程度表現するのかという判断は、本当に難しかったですね。当初は、削り節をケーキに振りかけたり、生地に多く練り込んだりと、鰹節の形状や量についてもかなり迷走しました。ただ、まるじょうさんから『ほのかに香る程度の鰹節感』という方向性が出されてからは、『削り粉』を使用するということで決定。あとは、鰹節の旨みをどう引き出すかということが課題だったんですが、そのときに突破口となったのが、『発酵』というアイデアでした」
今回のコラボプロジェクト以前に、発酵食材を使ったレモンケーキ開発に取り組んでいた奥本さんは、発酵食材と鰹節の旨み成分が相乗効果を生み出すことに気づきます。
「まずは、鰹節の風味をほのかに感じてもらえる削り粉に、米こうじと、乳製品の代わりになる甘酒を合わせることにしたんです。さらに、小麦粉ではなく米粉を選んだのは、そもそも鰹節がご飯と相性が良いという発想からです」

ほかにも、豆乳や大豆由来のバター、奄美大島諸島のさとうきびのみを原料とする「素焚糖(すだきとう)」、ハチミツなどを加え、グルテンフリーでなおかつヘルシー志向のレモンケーキが完成します。
「発酵食材などこだわりの素材に、島ごころのレモンケーキの特徴である、防腐剤やワックスを使っていない瀬戸田レモンの果皮を使った香り豊かなレモンピールを加えると、それぞれの味や香りがバトンリレーのようにつながっていくんです。おそらく、鰹節が要となって、一つひとつの材料がお互いの素材感を高め合っているんだと思います。しかも、ケーキを焼き上げたときの香ばしさが、鰹節そのものの香ばしさと相まって、とても良い風味を作り出すんです」

たまりません!!
未知への挑戦とも思われた、日本古来の調味料である鰹節を使用したレモンケーキは、こうして日本独自の食文化「麹」と融合することで見事に完成。そのレシピをもとに、尾商の生徒たちもレモンケーキ作りに挑戦し、学園祭での販売では大きな評判を呼んだそうです。
今回のコラボプロジェクトは、島ごころにとっても大きな可能性を感じる取り組みだった、と奥本さんは続けます。
「郷土愛を育む商品作りに力を注いできた島ごころにとって、尾道の食材同士が融合した『まるにゃん肉球レモンケーキ』の開発は、新たな扉を開く挑戦となりました。可能性はますます広がると実感しています」

肉球レモンケーキ
やさしい甘み、深みのある味わい。見た目もかわいい「肉球レモンケーキ」
さて、まるじょうと島ごころ、それぞれから完成までの話を伺いましたが、実際にどんな商品なのか気になるところですね。私も興味津々。早速レポートします!
まずは、『まるにゃん肉球レモンケーキ』のパッケージから。
商品名からもわかるように、このレモンケーキのアイコンとなっているのが、まるじょうのキャラクター猫「まるにゃん」です。人と猫が一緒に楽しめる鰹節「猫節」の発売以来、まるじょうのSNSにも度々登場していたまるにゃん。今では、猫好きのコミュニティから大きな注目を集め、グッズも広がっているそうです。
筒形のパッケージには、このまるにゃんのさまざまな表情が描かれ、国産レモン生産量日本一の瀬戸田レモンと尾道の風景のイラストがそれらを囲みます。「みんなで力を合わせて作ったにゃ」のまるにゃんコメントに、思わず手に取ってしまうのは猫好きの方だけではないはず。かわいらしさ全開のパッケージです。


その中から透けて見える「肉球型」のレモンケーキ。肉球のあのプニプニとした感覚が思い浮かぶようで、見るからにふんわり感も伝わってきます。
実はこの肉球型、製造を担当した島ごころさんがとても苦労したポイントでもあったそうです。本物の肉球に近い深みのある形状のため、崩さずに型から抜くには、焼き上げ後に−39℃で急冷凍する必要があるのだとか。その一手間のおかげで、ぷっくりとした肉球のフォルムが保たれています。

肉球へのこだわりを感じます
では、早速袋から取り出して食べてみましょう。
まずは香り。レモンの芳醇な香りと、焼き上がり直後を思わせる香ばしさも感じます。肉球の感触そのままに、手にしたときのふわふわ感がたまりません。
口に入れた瞬間、しっとりとした食感と同時に、レモンの爽やかさが広がります。そして少しずつ伝わってくる、ケーキの焼き上がりとは違う香ばしさ。そう、このほのかに感じる燻製のような香りがまさに鰹節!レモンケーキを邪魔するどころか、味の深みと風味を高めています。
こだわり素材が生み出すやさしい甘みと、レモンピールのほのかな苦味のバランスも絶妙。そこに鰹節の香ばしさが加わり、これまで食べたことのない奥深い味わいのレモンケーキだと実感です。「鰹節をスイーツに!?」と少々疑っていましたが、見事に裏切られました!
パッケージに書かれてある「見た目はかわいい本格派」のコメントにも納得のレモンケーキです。

また「なじみマガジン ONOMICHI」の運営に携わる30代猫好き女性スタッフは、普段あまりレモンケーキは食べないとのことですが、この『まるにゃん肉球レモンケーキ』は食べたあとに感じる“さりげない鰹節の旨味”がとにかくクセになったそう。
最初は鰹節が入っていることを知らずに食べたそうなのですが、防腐剤やワックスを使っていない瀬戸田レモンの果皮を使ったレモンピールの爽やかさとほどよい苦み、甘すぎず深い味わいのするしっとり食感の生地がとても気に入ったそうです。
その後に鰹節が入っていることを聞いて改めて納得した様子。「鰹節の旨味に無意識に心を掴まれました。気づけばもう一つ、もう一つと食べています」と、すっかり『まるにゃん肉球レモンケーキ』の虜に。

2025年2月22日「猫の日」を皮切りに、本格的に販売が開始される『まるにゃん肉球レモンケーキ』。尾道を代表するまったく新しい概念のスイーツ、皆さんにもおすすめの逸品です。
「まずは尾道の皆さんに愛されるスイーツになることを願っています。そこから、尾道といえば『まるにゃん肉球レモンケーキ』と、全国の皆さんにも認知していただければ嬉しいですね」と河本さん。

現在『まるにゃん肉球レモンケーキ』は、公式通販サイトの他、尾道市内にあるお土産屋「尾道ええもんや」各店、東京銀座の「ひろしまブランドショップ TAU」で販売中です。
ぜひお試しくださいにゃ!