尾道・向島にあるスペシャルティコーヒー専門店「珈琲豆ましろ」
尾道と聞いて思い浮かべるものといえば、「お寺」や「石畳の坂」などノスタルジックな街並み、それから古民家を改修したカフェなどでしょうか。
それらは、JR尾道駅周辺のいわゆる「本土」に広がる風景。ですが、尾道には「しまなみ海道」が通っていることからもお分かりのように、島々も点在しています。
その中でも、尾道水道を挟み本土の対岸にあるのが「向島(むかいしま)」。渡船でわずか4分の距離にある島です。
今回取材で訪れたのは、その向島にある「珈琲豆ましろ」さん。
南米やアフリカの地で、生産者によって丁寧に育てられたクオリティの高いスペシャルティコーヒーを、焙煎し販売するお店として、2017年にオープンして以来、尾道市内外の多くのファンを魅了しています。
向島は、移住者が多い島としても有名。本土の賑わいからは少し離れ、瀬戸内の穏やかな海を感じながら島暮らしを満喫したいと、全国各地からの移住者が後を断ちません。そして、「珈琲豆ましろ」のオーナーである、須山祥平(すやましょうへい)さんもその一人。大学進学、就職と、出身地である広島市から離れ、向島にJターン移住しました。
そんな「珈琲豆ましろ」の須山さんが手掛ける広島の新土産『ゆるねこむかいしまコーヒー』とはどんなコーヒーなのでしょうか?
好きを仕事に。会社員からロースターへ、そして向島へ
『ゆるねこむかいしまコーヒー』のことを説明する前に店主の須山さんについてご紹介します。
向島での暮らしを始める前は、東京で仕事をしていた須山さん。どのような経緯で、この島で珈琲豆のお店を構えるに至ったのでしょうか。
「コーヒーは昔から好きで、東京にいた頃も豆を買っては、よく自宅で楽しんでいました。いつかはコーヒー屋をしたいなという夢もありましたね。でもそれはずっと先のことで定年してから、というイメージでした。
その頃、社会人になって数年経っていたんですが、次第に、会社勤めを続けること自体に魅力を感じられなくなって。『このまま何もしなくていいのかな?』と思うようになったんです。そこで思い切って仕事を退職して、ひとまず自分が好きなことを深めていこうと、コーヒーの世界に足を踏み入れました」
それからは、「焙煎」に絞って勉強会やセミナーに参加したり、数多くのロースター(焙煎士)の元に訪れたりと自分の知識を深めて行くのと同時に、生産地にも足を運び、生豆(なままめ)生産の様子も目にしたとか。そしてある程度の技術が身に付いてからは、イベントに出店するなど、直接お客さんの評価を耳にする機会も持ったそうです。
自分のペースでじっくりと研鑽を積み、焙煎の道を歩んできた須山さん。
遂に、自らの店を開く場所を探すため、西日本を中心に各地を周り始めます。そして巡り会ったのが、移住者が多く暮らす尾道の向島でした。
全国に発信、広島の新土産「ゆるねこむかいしまコーヒー」
「あなたがあなたの大切な人に淹れたコーヒーが世界で一番美味しい。」
須山さんのコーヒーへの思いはこの言葉に尽きます。
自分が焙煎する豆は、あくまでもお客様の笑顔をつくるためのきっかけ。ロースターとしてのこだわりはあるものの、幸せづくりの黒子に徹する須山さんの姿勢が、その言葉から感じ取れます。
「僕は元々、周りの人たちが楽しそうに過ごしている姿を見るのが好きなんです。自分がその輪の中心にいるというよりは、それを眺めているというか。コーヒーも一緒なんです。僕が焙煎したコーヒーをお客様が淹れて、お客様自身やそれを口にする方々が楽しむことがなにより大切。だから僕の豆が担うのは、皆さんの幸せをお手伝いするほんのきっかけにすぎないと思っています」
そんな思いを持ちながら、これまで「珈琲豆ましろ」を続けてきた須山さんですが、2020年に新たなチャレンジを行います。
それが今回取り上げる「ゆるねこむかいしまコーヒー」。
広島の新たな名物土産を作り、全国へ元気を発信したいと、クラウドファンディングで見事ネクストゴールまで達成、商品化されたコーヒーなんです。
『ゆるねこむかいしまコーヒー』には、Shimanami blend(しまなみブレンド)、Shiokaze blend(しおかぜブレンド)、Naminori blend(なみのりブレンド)の3種類があり、ダンク式と呼ばれる、コーヒーバッグで作られています。
このダンク式、いわゆるティーバッグのように、お湯に浸すだけで美味しいコーヒーが楽しめるとあって、抽出初心者でも気軽に試すことができます。また、その手軽さから、アウトドアや職場などでも重宝されてるとのこと。同じように手軽さといえば、ドリップタイプもありますが、ダンク式の場合はお湯に浸すため、それ以上に豆の味を余すところなく引き出すことが可能です。そして、わずか2分で美味しいコーヒーを楽しめる逸品です。
さて、味については後ほど詳しくご紹介するとして、まずはおそらく皆さんも気になっているはずの、こちらのおしゃれでかわいらしいパッケージについて。
尾道は言うまでもなく、「猫の街」としても有名ですね。路地からひょこっと現れる猫見たさに、わざわざこの地を訪れる観光客もいるほど。そんな尾道を象徴する猫が、このコーヒーのキャラクターになっています。しかもその姿、とってもゆる〜いんです。
プロのイラストレーターがデザインしたという猫は、その名も「ゆるねこ」。
自転車に乗ってみたり、砂浜で本を読んでみたり、海でサップをしてみたり、楽しんではいるんだろうけど、表情はあくまでゆる〜い猫たち。ただひたすらに、ただ淡々と、瀬戸内の穏やかな気候に身を任せているような姿が、なんとも心を癒してくれます。
猫好きの方を含め、自分のために購入する方もいれば、個包装になっているため、お土産やプレゼントとして利用する方も多いとか。「ゆるねこ」のパッケージを手にした瞬間の皆さんの笑顔、想像できるようですね。
「しまなみブレンド」でほっと一息。心も身体もゆる〜っと
今回は『ゆるねこむかいしまコーヒー』の中で、私のイチオシ「しまなみブレンド」を紹介します。
華やかな酸味を感じる「しおかぜブレンド」と、ほんのりビターの「なみのりブレンド」の中間的な味わいの「しまなみブレンド」は、酸味とコクのどちらも楽しめるコーヒーです。
では実際に、ダンク式コーヒーバッグを試してみます。
このとき、一番大事なのが、お湯の分量と浸す時間を正確に量る(計る)こと。
まずは、コーヒーカップを用意し、ダンク式コーヒーバッグをその中にセッティングします。
熱湯をごく少量注ぎ、バッグ全体に染み渡らせ20秒〜30秒程そのままに。このことで、コーヒーの粉が蒸れ、抽出しやすくなるそうです。
そこへ、さらに熱湯を約130cc〜140cc注ぎ入れ、バッグを優しく上下に揺らすこと1分半〜2分。
これで美味しいコーヒーの抽出完了です。
さて、ではいただきます。
香りは…、ハンドドリップなどよりは劣るかもしれませんが、柔らかなコーヒーの香りが漂います。
味わいは…、「しまなみブレンド」の特徴である、すっきりとした酸味をまず感じ、次にコクのある苦味、そして飲んだ後に、穏やかな優しい甘みが広がります。
コーヒーだけを味わうのもいいですし、ケーキやチョコレート、甘味の濃いドライフルーツなどと一緒に楽しむのもおすすめ。
ほっと一息つきたいタイミングで、このコーヒーを味わいながら、心も身体もゆる〜とするのもいいかもしれませんね。
数種類の豆を合わせた「しまなみブレンド」、使われているスペシャルティコーヒーの一つひとつの品質の良さと、須山さんの焙煎も含めた丁寧な仕事ぶりが伺えるコーヒーだと感じました。
現在、地元のブリュワリーやレストランとのコラボ商品を作ったり、中学生と共同でパッケージデザインを考えたりと、地域の人との繋がりから新たな取り組みにもトライしている須山さん。これから益々、多彩な業種とのコラボレーションを楽しんでいきたいと話します。さらに、焙煎だけではなく、抽出技術も磨きながら動画配信をしていきたいとも。
「コーヒー屋、特に焙煎した豆だけを販売しているお店は、意外に敷居が高くて、なかなか入りづらいと思われている方も多いようなんです。でも、そんな方にも気軽に来ていただけるような店であり続けたいですね。『コーヒーのこと、全然わからないんです』とおっしゃる方にとっても、常にオープンなお店でありたいです」
現在、『ゆるねこむかいしまコーヒー』は実店舗、通販サイト 楽天市場(ふるさと納税)、公式ホームページの他、尾道市内の土産物店や広島市内のおりづるタワーなどで販売中です。
ゆる〜く癒されつつ美味しいコーヒーを味わいたい方にぜひおすすめです。
またAmazonや楽天市場では、「珈琲豆ましろ」の商品を購入することができます。こちらもぜひチェックしてみてください。