備後地域で愛される逸品を知る。

2024.08.12 2024/08/31

【島たまご】瀬戸内の離島でのびのび育った高級品種の卵

瀬戸内の離島でのびのび育った鶏が生む「島たまご」

広島県の東部に位置する三原市は、海もあり山もあり、年間を通して四季折々の自然美を楽しむことができるまちです。さらに、広島の空の玄関口である広島空港や新幹線が止まるJR三原駅、船が往来する港も2つあり、アクセスの良さが特徴です。

その三原市の沖合に浮かぶ「佐木島」は、JR三原駅にほど近い三原港から高速艇に乗り、わずか15分程で到着する人口600人足らずの離島。瀬戸内ならではの温暖な気候の恩恵をたっぷりと受け、みかんやレモンなどの柑橘や野菜の栽培が盛んです。また、のびのびと育つのは農作物だけではありません。
今回ご紹介する鶏も、のどかな島時間が流れる佐木島で元気に育てられています。

船から見る佐木島の写真
私たちは須波港からフェリーに乗船
佐木島が見えてきました!
佐木島(向田港)のフェリー乗り場の写真
いよいよ佐木島(向田港)に到着です

訪れたのは、堀本隆文さん、紀子さんご夫婦が営む「堀本ファーム」。
2019年より、「瀬戸内柑太郎」と名付けられたコーチン種の鶏を飼育し、『島たまご』を生産しています。
農場で育つ鶏たちを眺めながら、ご夫妻に飼育の様子や『島たまご』の特徴などを伺いました。

堀本ファームの看板「堀本ファーム 島たまごの里」と書いてある
堀本ファーム
入口には一枚板の看板が掲げてあります
堀本ご夫妻が並んでいる写真
堀本ご夫妻
快く取材を受けてくださいました!

離島プロジェクトで始動。希少価値の高いコーチン種の平飼い

コケーコッコッコ!コケーコッコッコ!
堀本ファームでは、鶏たちが高らかな鳴き声を上げながら、農場の中をあっちに行ったりこっちに行ったり、自由気ままに動き回っています。そう、ここの特徴は「平飼い」。2つある広い農場は、まるで鶏たちの運動場そのものです。軽やかに走る鶏や、尾を振りながらリズミカルに歩く鶏など、見ていて飽きることがありません。

飼われている鶏をフェンス越しに撮影した写真
皆元気いっぱい!
それぞれが自由に過ごしています

「かわいいでしょ。それぞれ表情も違うんですよ」と紀子さん。
よく観察すると、1羽で行動するマイペース派もいれば、常に仲間と行動を共にするグループ派もいて、性格も異なるようです。
ただ唯一、鶏たちが揃って行動を共にするのが餌の時間。堀本さんが運ぶ餌の入った押し車の気配を感じるや否や、鶏たちが一斉に駆け寄り、一気に鳴き声も高まります。そのかわいらしさは、見ている者の笑顔を誘います。

餌を押し車で引いて鶏舎に向かう写真
ごはん!ごはん!と駆け寄る姿に思わずキュン

現在、この広い敷地で飼育されている鶏は450羽(2024年8月現在)。2019年の農場オープン時には、10羽の廃鶏の試験飼育からスタートしたそうです。

「名古屋コーチンを貰い受け平飼いで飼育してみたら、思いの外、島の環境に合ったんです。そこからコーチン種のひよこを少しずつ増やしていきました」

もともと、堀本さんはお父様の代からの養鶏農家。昭和初期に十数軒で始めた養鶏の歴史は古く、最盛期には、堀本家だけでも約1万羽の鶏を飼っていたということです。ですが、鶏卵の価格の安さに反比例するかのように飼料代が徐々に高騰。廃業する家が続き、20年ほど前には最後の1軒だった堀本さんも、飼育を断念したと言います。

「それからは違う仕事をしてたんです。以前鶏舎があった場所も木々が鬱蒼と生い茂って、以前とは様変わりしていましたね。そんなとき、もう一度、鶏を飼う機会が訪れたんです」

そのチャンスをもたらしたのが、みかんで佐木島の活性化を図ろうと活動していた「鷺島みかんプロジェクト」。島に暮らす柑橘農家や、島を盛り上げたいと望む島内外の人たちとが共に立ち上げたグループです。

「みかんを栽培する際、畑に生える雑草の手入れは一苦労。そこで鶏を放し飼いにし、雑草を食べてもらうことができないかと相談を持ちかけられました」

ただ、その場合、鶏が逃げないよう囲いをすることが必須。近年島で急増しているタヌキやイノシシから鶏を守るためにも欠かせません。さらに、ある程度の数を飼育するとなると、当然その基本的な知識も重要。素人が一から始めるのは困難です。

「そこで、もとの養鶏場をきれいにして何本かのみかんの木を植え、私が挑戦してみるということになったんです。以前は鶏舎でケージ飼いしていましたが、この機に希少価値も高いコーチン種を平飼いで育てることにしました」

ミカンの苗木の写真
みかんの木を植えることで始まった堀本さんの新しい挑戦

そして、鷺島みかんプロジェクトのメンバーや、その呼びかけに応じたボランティアの手によって1ヶ月がかりで整えられた養鶏場は「堀本ファーム」として生まれ変わります。
鶏による雑草対策の実現は難しかったものの、今では毎日200個もの『島たまご』が産まれています

驚きの栄養価は、こだわりの餌とストレスフリーの平飼いにあり

コーチン種といえば、国内でもわずか6%程の高級品種。しかも、堀本ファームではストレスフリーの平飼いで飼育され、味わい濃厚な有精卵を手にすることができます。

「餌にもこだわっているんですよ。この島のみかんの木から摘果された青みかんや浜で採れたひじき、クローバー、それに島で精製された塩も使っています。とにかく、人よりも良いものを食べてるんじゃないかって思うくらいです」と堀本さんは笑います。

冷凍された青みかん
鶏達が一年通して食べられるように冷凍された青みかん

他にも、地元の精米所から譲ってもらう米ぬかや、鰹節工場の魚粉、牡蠣殻など、毎日堀本さん自ら配合した特製の餌の効果は、高い栄養価にも現れています。
一般の卵と比較すると、脳細胞を活性化させるDHA(ドコサヘキサエン酸)が約2.5倍、高血圧や動脈硬化予防に効果の高いEPA(エイコサペンタエン酸)、免疫力アップや抗酸化作用のあるβカロテンは共に約30倍、視力回復や美肌に良いとされるビタミンAは1.2倍にも上ります。

「中でも、無農薬で育てた青みかんを与えることで、卵特有の生臭さがないんです。市販の卵は苦手だけど、『島たまご』だったら食べられるというお客様もいるんですよ」と紀子さん。

とはいえ、飼育開始当初は、タヌキやイノシシの被害もあったとか。

「網できちんと囲いをしていても、それを破って入ってくることもあるんです。だから、数年前にクラウドファンディングで寄付を募って、少々のことでは破損することのない網を設置しました。おかげでご覧の通り、鶏も安心して走り回っています」

猪除けの網で囲われた鶏舎の写真
頑丈な網で守られて鶏達も安心ですね

佐木島ならではの温かな気候の中、多くの人からの支援も受けのびのびと育つ鶏たち。
ケージで飼われている鶏は1年半で廃鶏にされますが、堀本ファームでは飼い始めて5年が経った今でも卵を産み続けているそうです。

白身のプリプリ感と黄身のコクが後をひく「島たまご」

『島たまご』のパッケージは、産みたてを新鮮なまま届けるため、呼吸ができるよう再生紙を利用して作られたもの。ラッピングされた紙には、『島たまご』の大きな文字の後に、堀本ファームで元気に育つ鶏「瀬戸内柑太郎」のイラストが描かれています。

『島たまご』のパッケージ写真
洗礼された上質感のあるパッケージ
鶏のイラストが渋くてかっこいいです
パッケージから取り出した卵
卵は淡い色味に珍しい模様をしています

卵を手に取ると、うっすらピンク色の殻には花びらのような白い斑点が。これはコーチン種特有の模様だそうです。大きさは一般的な卵と比べ一回り大きめで、殻はやや硬めです。

今回は、堀本さんおすすめの「ゆで卵」と、「玉子丼」で『島たまご』をいただいてみます。
では、「ゆで卵」から。
ピンク色の殻を割ると、真っ白でツヤツヤの白身が現れます。塩を少々つけてそのまま一口。
プリッとした弾力とモチっとした歯応えが、これまでのゆで卵より格段に上です。しかも、白身そのものに旨みを感じる。
さらに黄身は色濃く鮮やかで、口に含むとなめらかかつ濃厚な味わい。卵特有の生臭さもありません。噛むほどに白身と黄身の旨みが増し、これ一つで「卵料理」として完成していると実感です。
普段はそれほどゆで卵を好んで食べる訳ではないのですが、『島たまご』に関しては、一つと言わずもう一つ、と思わず手が伸びてしまいます。シンプルな食べ方だけに、卵そのものが持つ味わい深さが、その品質の高さを表しているようです。

半分に切ったゆで卵の断面
黄身の濃いオレンジ色が食欲をそそります

次は「玉子丼」で。
シンプルに具材は玉ねぎのみ。醤油、砂糖、酒、みりんを煮立て、玉ねぎに火が通ったら、ふんわりと混ぜた卵を投入。あまり熱を加え過ぎないタイミングでご飯の上に盛り、ミツバを飾れば完成です。卵の半熟具合が見るからにトロットロで、食欲をそそります。
それではいただきます。
出汁に負けないくらいの、圧倒的な卵の濃厚さ。なにより黄身が持つコクが凄い。やわらかな口触りもたまりません。これほど存在感を感じる卵は初めて。まさに、卵の中の「逸品」です。卵料理の楽しさが膨らむこと間違いなしですね。

卵丼の写真
卵の美味しさがダイレクトに楽しめました!
うーん、美味しい♡

現在、『島たまご』は三原市をはじめ近隣の市町にある洋菓子店や飲食店、ホテルなどでも使用されているとか。そのおいしさは様々な料理に形を変え、お客様のもとに届けられています。

「佐木島の『島たまご』をより多くの人に食べていただきたいですね。食べていただいたら、これまでの卵との違いがわかるはずです。島の風景を思い浮かべながら、『島たまご』のおいしさを味わっていただければと思っています」

現在、瀬戸内柑太郎の『島たまご』は通販サイト 楽天市場(ふるさと納税)、さいさいマルシェの他以下で購入できます。ぜひ皆さんもお試しください。

  • 三原市:道の駅 みはら神明の里、フレスタ(西町店、おかず工房三原駅前店)、鳥徳、さざなみSHOPマーレ
  • 東京都:ひろしまブランドショップTAU

生産者の紹介

堀本ファーム
住所:〒723-0021 広島県三原市鷺浦町須波