
【究極の大吟醸】世界も認めた!ワイングラスで美味しい日本酒
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広島県三原市大和町は、三原市の北西部に位置する山間のまち。
田園風景が広がる里山では、お米をはじめ、野菜や果物などの農産物の栽培が盛んに行われています。以前ご紹介した「道の駅 よがんす白龍」の『薪窯焼きピッツァ だいわレンコン』に使われているレンコンもその一つ。大和町で育つおいしい農産物の最大の特徴である「甘み」は、標高約300mという地形がもたらす気温の寒暖差によって育まれる自然の恵みです。
その大和町で四季折々の「果物」を育て、販売や収穫体験を行っているのが「SMILE-LABO HIROSHIMA」。ブドウやイチゴ、モモやナシなど全8種類の果物を栽培しています。
なかでも、甘みの濃さから高い人気を誇っているのがブドウ。山の傾斜を利用した水はけの良い圃場では、安芸クイーンやハニービーナス、藤稔など数種類のブドウが栽培されています。
さて、今回紹介するのは、「SMILE-LABO HIROSHIMA」(※以下、スマイル・ラボ)で収穫した「安芸クイーン」を主原料に醸造されたナチュラルワイン『朗(ほがらか)2024』。
大和町のテロワール(ブドウ畑を取り巻く自然環境要因)を活かし、有機栽培のブドウから生まれた自然味豊かなワインについて、スマイル・ラボの所長、猪上 淳さんと、ワイン醸造を担当した「no.505 Hiroshima Winery」の新井 俊秀さんにお話を伺いました。
スマイル・ラボの前身は、観光農園「果実の森公園」。
約30年にわたり、大和町の豊かな自然環境のもと、17ヘクタールの広大な敷地でさまざまな果物を育てていました。その農園を2022年にスマイル・ラボが承継し、子どもも大人も楽しめる地域に開かれた観光農園をめざし活動しています。
猪上さんは、それまでも長く農業に従事し、特にブドウ栽培に力を注いでいた人物。優れた技術力を見込まれ、新たなスタートを切る観光農園の所長として迎えられました。
●猪上さん
「三原には『佛通寺ブドウ』という有名なブドウがあるように、ブドウ栽培に適した環境が整っています。特にスマイル・ラボの圃場(ほじょう)は標高500メートルの場所にあり、日当たり良好で、水はけの良い肥沃な土壌が自慢です。ここでの果物栽培は、自分の力を活かす良い機会だと感じています」
一方、新井さんは、岡山県で約8年間ワイン醸造を学び、2023年より「no.505 Hiroshima Winery」の醸造責任者として三原市へ移住。現在は、スマイル・ラボのすぐそばにある圃場でワイン用のブドウ栽培も行っています。
●新井さん
「昨年からは、スマイル・ラボ内に新設されたワイナリーでワイン醸造を開始しました。no.505 Hiroshima Wineryもスマイル・ラボも、スタート時から自分たちが育てたブドウを使ったワイン醸造をめざしていていたんです。同じ目標を持つもの同士が一緒に歩みはじめたと言ってもいいかもしれません」
今回紹介する『朗(ほがらか)2024』は、スマイル・ラボが有機栽培したブドウをno.505 Hiroshima Wineryが醸造してできたワイン。
主原料となる安芸クイーンは巨峰同士を掛け合わせて作られた品種で、別名「クリスタル・ローズ」と呼ばれる幻のブドウ。安芸クイーン特有の豊かな香り、また、甘みと酸味のバランスの良さが存分に反映されています。
●猪上さん
「収穫を行ったのは、9月中旬です。植物の生命力が増し、自然のエネルギーが果実に満ち溢れるといわれる満月の夜に作業を行いました。あいにく雲が月を覆い光はわずかでしたが、夜を徹した作業は興味深い体験でした」
満月の夜にぶどうを収穫すると、果汁が増え、糖度が高く栄養が行き渡ったものが収穫できると言われています。
●新井さん
「安芸クイーンでワインを醸造するのは初めての経験だったんですが、収穫されたブドウを見ると、どんなワインが生まれるのか楽しみになりましたね」
そもそも、no.505 Hiroshima Wineryが醸造しているのは、ナチュラルワインと呼ばれる自然派のワイン。ブドウそのものが持つ味わいを最大限に活かすために、できるだけ人為的、化学的な工程を踏まずに醸造を行っています。その過程ではブドウの皮に付着している野生酵母に発酵を委ね、一般的なワインに使用されている酸化防止剤は添加しません。もちろん、自ら手掛けるブドウの栽培では化学農薬や除草剤を一切使用せず、有機栽培にこだわっています。
●新井さん
「no.505 Hiroshima Wineryがめざすのは、私たちも自然の一部なんだ、と感じられるようなワインなんです。ブドウがゆっくりと発酵していく様子を見守り、『どういうワインになりたいか?』と問いかけながら醸造することが私の役割だと思っています」
さて、収穫の翌日から始まった醸造では、まず収穫したブドウの房から実だけ取り、大きなタンクに入れるところからスタート。皮やタネも一緒に潰されジュース状になったブドウは、自らが持つ酵母の働きで静かに発酵を始めます。その際、酵母が糖分を食べることでアルコールと炭酸ガスが発生し、ワインが造られていきます。一般的なワインではこの発酵の最終段階で、菌の活動を抑制する酸化防止剤を加えますが、no.505 Hiroshima Wineryではそれを使用せず、あくまでもブドウの持つ発酵力に委ねます。瓶詰めを行ってからも多少の発酵が進むのはそのためです。
●猪上さん
「収穫後、新井さんにお任せした醸造ですが、完成したワインを飲んだときには、そのおいしさに驚きました。もともとアルコールは得意な方ではないんですが、『朗(ほがらか)2024』はアルコール度数が10度と低く、飲みやすいんです。なにより、安芸クイーンならではの香りの良さには感動しました」
特に、瓶の底に溜まる「澱(おり)」は香りが強く、ワインとよく混ぜ合わせると、さらに香りが湧き立つといいます。
●新井さん
「水を一滴も使わずブドウのみで醸造していますので、果実そのものの特徴がダイレクトにワインに活かされているんです。バラやユリ、南国のパッションフルーツやライチのような香り、それから爽やかな酸味が心地よいワインに仕上がり、微発泡も飲みやすさにつながっていると感じます」
ワインの名前である『朗(ほがらか)』は、晴れ晴れとした明るい朗笑(ろうしょう)や、強い野心のないそのままの心を表現しています。また、「全てが完璧ではなく、未完成だからこそ描ける未来と笑顔」という意味も込められているとのこと。
「自らが育てたブドウでオリジナルワインを造りたい」という、同じ目標を持ったスマイル・ラボとno.505 Hiroshima Winery。その両者がともに未来に思いを馳せ、自然体で手掛けたワインの第1作目として、『朗(ほがらか)』という名前はとても相応しいネーミングです。
『朗(ほがらか)2024』を手にし、まず最初に目を引くのがそのエチケット(瓶に貼られたラベル)。ピンク色のワインで満たされた瓶の上に貼られたエチケットは、ピンク・イエロー・グリーン・ブルーなど様々な色がグラデーションのように広がり、まるで夕日にかかる虹のように見えます。
また、大和町の木々や花々が自然が一年を通しさまざまな色合いに変化していく様もイメージでき、自然派ワインと呼ばれるナチュラルワインに相応しいエチケットだと感じます。
では早速、大和町で育まれるブドウを思い浮かべながら開栓。すると、シュッという音とともに、瓶の底から小さな炭酸の泡が無数に沸き立ちます。その様子からは、水を一滴も使わずブドウのみで造られたワインの生命力が伝わってくるようです。
グラスに注ぎゆっくりとまわすと、花のようなやわらかな甘い香りが漂ってきます。口に含むと、ほのかな酸味と甘み、そして炭酸のすっきりとした爽やかさが広がります。フレッシュなブドウを香りとともに口にしているかのような印象も。
このままワインのみでも充分楽しめますが、次は、新井さんおすすめのサーモンのマリネとペアリングも試してみます。
サーモンのコクとマリネの酸味がワインの酸味と重なり、爽やかさが一層増すようです。不思議なのは、ほのかな甘みが余韻として残ること。酸味が際立つかと思いきや、まろやかさも感じる味わいです。
新井さん曰く、ワインの酸味には同じく酸味を感じる食べ物をペアリングすると、新たな味わいを発見できるとか。他には、魚介のカルパッチョや、フルーツポンチ、スイーツなどもおすすめだそうです。
アルコール度数が10度と低めで、思わず杯を重ねそうなところですが、グラスに注ぎしばらく時間を置いてからも飲んでみることに。そうすると、炭酸がほどよく抜け、甘やかな香りを一層感じます。例えるなら、熟したイチゴのようなイメージでしょうか。味わいもやわらかさを増すようです。
1本で色々な楽しみ方ができるワイン『朗(ほがらか)2024』。まさしく、大自然の恵みを味わえるナチュラルワインの逸品です。
●新井さん
「その日に飲み切らなくても、栓をすれば2週間ほどは味わいの変化もなく楽しんでいただくことができます。ポイントは冷蔵庫で充分に冷やして飲むこと。ブドウの力をそのまま活かしたワインを皆さんに味わっていただきたいですね。
それから、ナチュラルワインはブドウの育ち具合によって毎年味わいが変化するのも楽しみの一つなんです。『朗(ほがらか)2024』だけでなく、来年、再来年と少しづつ変化するワインにも期待していただきたいですね」
●猪上さん
「スマイル・ラボでの時間を楽しんでいただき、さらにここでの体験を思い出しながらご自宅でワインを飲んでいただけたら嬉しいですね。今後は、ブドウを使ったワインだけでなく、スマイル・ラボで収穫できるさまざまな果物からもお酒を醸造するのが目標なんです。そんな夢を描けるような果物を育てようと思っています」
収穫体験をはじめ、ワインとキャンプを融合させた「ワインピング」やマルシェなども定期開催しているスマイル・ラボ。訪れる人に優しい笑顔をもたらすような取り組みがますます広がります。
現在、『朗(ほがらか)2024』は「SMILE-LABO HIROSHIMA」内にある売店で販売中です。
皆さんも、大和町の恵みが凝縮されたナチュラルワインをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。