イチオシの広島土産!アサムラサキの「かき醤油」
お土産物といえば、どうしても手軽な和菓子や洋菓子などの甘いものを選びがち。ここ広島では、言わずと知れた、もみじ饅頭やレモンケーキなどが定番といったところでしょうか。
ですが、それらと同じようにぜひおすすめしたいのが、ご当地ならではの「味」が楽しめる調味料。中でも、広島の特産品である「牡蠣」エキスがふんだんに使われている『かき醤油』はイチオシのお土産です。
今回は、その『かき醤油』を求め、岡山県笠岡市に本社工場を構える「株式会社アサムラサキ」を尋ねました。お話を伺ったのは、代表取締役社長の藤井悠子(ふじいゆうこ)さん。会社のこれまでの歩みや、看板商品『かき醤油』への思いなどをお伺いしました。
アサムラサキが創業したのは1910年、今から110年以上も遡る明治時代。
「藤井國五郎本店」の名で広島県福山市に本社を構え、醤油製造を生業に商売を始めます(現在も本社所在地は福山市)。
庶民の生活に醤油が欠かせなかった当時は、醤油蔵が今とは比べものにならないほど点在していたそう。そして、大正時代になり、宮内省御用達の栄誉を賜り、時の宮中顧問 三室戸敬光(みむろどゆきみつ)閣下より朝廷へ納める「紫」と云う意味で「朝紫」の命名を賜ったのが、アサムラサキの社名の由来だそうです。
ちなみに「紫」とは、醤油の色が紫であることからその別名で使われます。
戦後、外国の食文化が私たちの生活にも広がり始めると、醤油の消費量も少しずつ減少し、製造会社の数は当時の約6分の1に。その中でも長く歴史を刻んできたアサムラサキの代表作と言えるのが、『かき醤油』です。
6代目社長の役割は「笑顔につながる幸せ」をつくること
現在6代目となる藤井社長が家業を本格的に手伝い始めたのは、東京で大学生活を送る4年生の頃。
4代目であるお祖父様と、5代目であるお父様の体調が思わしくないと知ってからのことだと言います。
「祖父や父の姿を見ながら育ってきましたので、私にとって醤油作りは身近な存在。会社として出店していた地元の「福山ばら祭」や「宮島かき祭り」などのイベントにも、幼い頃から同行していました。家族が言うには、その頃から『私は将来、会社を継ぐ!』と宣言していたそうです。もちろん記憶にはありませんが(笑)。ですので、いずれは会社を手伝いたいという気持ちはありましたが、それは社会人をある程度経験した後。まさかこんなに早い時期になるとは思っていませんでした」
すでに就職活動を行い面接も受けている途中でしたが、このまま会社を放っておけないと悩んだ末に就職活動はやめて帰郷することを決断。在学中の最後の年の後半は週に1回授業を受けるために東京、それ以外の平日は会社の仕事を1日でも早く覚えるため全部署をめぐり、先輩社員から様々な知識や技術の指導を仰ぎながら、6代目として経営を本格的に任されていったと言います。
「学生時代の友人や恩師からもたくさん励ましの声をいただいたんです。応援してくれる人たちのために頑張ろうと、素直にそう思いました。食は、『笑顔につながる幸せ』を誰もが感じるきっかけです。決して高級なものでなくても、日々の営みの中で幸せづくりのお手伝いができればと思ったんです」
若くして会社を承継した藤井社長。地元でも老舗と言われる会社だけに、プレッシャーは大きかったそうですが、創業以来積み重ねてきた歴史と、受け継いできた伝統があったからこそ、後継者としての一歩を踏み出せたそうです。
広島の特産品「牡蠣」を使った、アサムラサキの看板商品
さて、その藤井社長も、アサムラサキの大看板とおすすめの『かき醤油』ですが、こちらは、4代目であるお祖父様が30年程前に商品化したもの。当時広島では、1994年に「アジア競技大会」、1996年に「第51回国民体育大会」が開催されたこともあり、県外の方に広島をPRする新しい商品を開発したい、という思いがあったそうです。そこで広島の特産品「牡蠣」を使った醤油の開発が始まります。
開発当初は、どうしても海産物特有の磯臭さやえぐみが出てしまい、牡蠣の美味しさのみを引き出し醤油にプラスすることが難しかったとか。それまで培ってきた知恵や技術を結集し、何度も試作を繰り返した末に、ようやく4代目も納得の『かき醤油』が完成したそうです。
「最終的には牡蠣の旨みエキスを抽出し、本醸造醤油にブレンドしました。そこに、かつお、昆布、椎茸のだしをプラスし、さらに砂糖やみりんも加えています。濃厚なつゆとしても、かけ醤油としても使っていただけるものに仕上がりました」
ですが、4代目がこだわり抜いた『かき醤油』は、販売して数年間はほとんど売れなかったと言います。
「商品名の醤油の上に『かき』と付いていますので、お客様からは『どのように使う醤油なのかわからない』という声がたくさん寄せられました。中にはオイスターソースと間違う方もいらっしゃって。そこで、美味しさと使い方を伝えるために、とにかくサンプルの提供と試食販売を何度も何度も繰り返しました。『食べたら、必ず美味しさをわかっていただける』と確信していましたので」
牡蠣の産地である「宮島」を中心に、サンプルとして提供された『かき醤油』の本数は、実に100万本を超えるとか。
そして、ようやく努力が実り、美味しさの評判は徐々に口コミで県内へと広がっていきます。ついには、大手百貨店やスーパーのバイヤーの目に留まり、その名は全国区へ。
「それからは、各ご家庭でも愛用してくださる方が増えていきました。細かな配合のバランスを試した上でできあがった商品ですので、自信を持っておすすめできますが、そこに第3者の評価があればもっと信頼度が上がるはずだと考え、モンドセレクション※1に出品し始めたんです。おかげさまで、以後10年以上「最高金賞」を受賞し、さらにITI優秀味覚賞※2でも二ツ星受賞と世界的な評価もいただいています」
※1 世界各地にある優れた製品を発掘・顕彰することを目的に、1961年、独立系国際機関としてベルギー政府の設立された国際的な品評機関。数ある優秀品質品評機関に於いて最も歴史のある代表的機構。
※2 第一印象や味・外観・香り・食感の基準に基づき製品の官能的品質が個別に審査・評価される。審査員は、権威あるシェフ・ソムリエ協会のメンバーであるプロの味の専門家で構成されている。モンドセレクションが「食の安全」を基本とした考え方をしているのに対し、ITI優秀味覚賞は「おいしさ」を評価するもの。
旨みとコクが圧倒的!「かき醤油」でレシピの幅が広がる
さて、では私も『かき醤油』をいただいてみます。
まずは、そのものの味を確かめるために、シンプルに「卵かけご飯」から。
一口目で、普段食べているそれとは全く違うものだとわかります。
とにかく、醤油の塩味よりも、牡蠣はもちろん、かつおや昆布などの旨みが圧倒的。それと並行して感じるコク。和食のだし文化が存分に活かされている醤油だと納得です。
砂糖やみりんの甘味も程よく、全ての材料のバランスが絶妙で、海苔や佃煮などその他のごはんのお供はもちろん必要ありません。ぜひ、醤油の味わいをそのまま楽しんでいただきたい一品です。
次に試したのは、お吸い物。
藤井社長おすすめの、『かき醤油』を水で希釈しただけの簡単な一品です。
具材は、お豆腐と三つ葉、それから仕上げの溶き卵のみ。
これも旨みがあって美味しい。余韻がいつまでも口の中に広がります。
牡蠣はもちろん、他の素材も厳選されたものを使用しているからこそ、旨みが塩味をはるかに上回ります。
お豆腐や三つ葉というシンプルな具材にも関わらず、その奥深い味わいに感動です。
その他にも、煮物や和物など、普段使用しているだし醤油をこちらの『かき醤油』に置き換えて色々と使用。どの料理も味わいに深みが増し、「醤油」としても「だし」としても万能な逸品だと実感です。これ一つで新たなレシピも広がりそうです。
さて、藤井社長は自らの感覚を大切に、新しい商品開発にも果敢に挑戦しています。その一つが「お菓子」づくりです。『かき醤油』を細かいパウダー状にすることで、お菓子に汎用し、現在までにいくつかのコラボレーションが実現。大きな反響を得ています。
「『かき醤油』は、亡き祖父が一から作り上げ、亡き父が販路を拡大した、当社にとってかけがえのない商品です。それを受け継ぎ、時代のニーズに合わせて新しい展開をさせていくのが、私にとっての使命だと思っています。歴史や伝統を、さらに次の世代に繋いでいくのも、6代目としての役目だと感じています」
広島に暮らす人なら、誰もが一度は目にしたことがある逸品『かき醤油』。
その現状に満足するのではなく、さらに多くの人に美味しさを伝えるため、新たな商品開発にも日々情熱を注ぐ藤井社長。今後もさらに私たちを唸らせる美味しい逸品を届けてくれるはずです。
現在、『かき醤油』は通販サイト Amazon、楽天市場、公式ホームページの他、以下で購入できます。ぜひ、皆さんのご家庭でも味わってみてはいかがでしょうか。
- 広島県:JR広島駅、広島空港の土産物店、各スーパーなど
- 大阪府:イオンリテール、万代、阪急オアシス、ライフコーポレーション、カノー、おおさかパルコープ、スーパーナショナル、サンプラザ、京阪ザ・ストア、光洋、近商ストア、マルハチ
- 東京都:ひろしまアンテナショップTAU、北野エース