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2025.12.31 2025/12/31

【onogo】本因坊秀策生誕の地、尾道で誕生した新感覚の囲碁

※写真の無断転載はお控えください。

地元大学生が発案!地域に根付く囲碁文化をより楽しいものに商品化

尾道といえば、穏やかな海と路地をのんびり歩く猫、そして島育ちのレモン。そんなイメージを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
ですが、尾道はそれだけではありません。歴史ある文化が今も受け継がれ、「囲碁」とも深い縁を持つ地域なのです。その背景には、しまなみ海道にある因島出身の名棋士・本因坊 秀策(ほんいんぼう しゅうさく)の存在があります。

本因坊秀策囲碁記念館外観写真
秀策の生家跡に建つ「本因坊秀策囲碁記念館」

そもそも囲碁は飛鳥時代に中国から伝わり、日本では貴族や武家の教養として発展したもの。なかでも、江戸幕府を開いた徳川 家康は大の囲碁好きとして有名です。政治判断の基礎訓練に囲碁を用い、対局の際には家臣に戦略を語らせることもあったと伝えられています。

また、家康は囲碁の発展を重視し、幕府の支援によって「本因坊」「井上」「安井」「林」という4つの家元制度を整えたことから、その文化が全国へ広がる土台が築かれました。のちに、これらの家元から多くの名棋士が輩出されますが、そのなかでも名棋士と称されたのが本因坊 秀策です。

秀策は、整然とした着手と構想力から「囲碁史上最高の棋士」と呼ばれることもあり、彼の打ち方である秀策流は、現代でもなお、世界の囲碁愛好家に研究され続けています。
尾道が囲碁を「市技」として定めているのも、この秀策の存在が大きく影響しているため。市内の小学校には囲碁クラブがあるなど、その精神は地域文化として今も息づいています。

大人と子供が囲碁を打っている手元を映した写真
尾道では囲碁に触れる機会が多くあるんですね

さて、この文化を今の世代に遊びながら届けられないか、という思いから開発されたのが、今回ご紹介する『onogo(オノゴ)』です。
発案したのは、尾道市立大学芸術文化学部・デザインコース4年の村上 桃花さん(2025年12月現在)。“地域の課題をデザインで解決する”というテーマの大学主催コンテストで最優秀賞を受賞し、そのアイデアを商品化したのが「株式会社タテイシ広美社」です。

タテイシ広美社看板
会社にお邪魔してきました!

商品化の指揮をとったのは、タテイシ広美社の天野 花菜(あまの かな)さん。尾道好きが講じて関東から移住してきた天野さんだからこそ、「このまちの美しさや、空気感なども感じられるように仕上げたい」と、村上さんのアイデアを理解し、新たな尾道の逸品へと導いたといえます。
開発の先頭に立ちプロジェクトを牽引した天野さんに、『onogo』の魅力について詳しく伺いました。

インタビューを受けるタテイシ広美社の天野さん
タテイシ広美社の天野さん
早速お話を伺います!

情報伝達のプロ集団が会社全体で開発に取り組んだ「onogo」

タテイシ広美社は昭和52年に創業し、手描き看板の製作を中心に事業をスタートした会社。その後、時代を読み、パソコンや大型プリンターを早期に導入したことで、同業他社に先駆けてデジタル印刷の時代を切り開き、現在ではLEDビジョン、大型サイン、デジタルサイネージまで幅広い製品を手がける総合企業へと成長しています。
同社が掲げるのは「看板屋ではなく情報伝達業」という理念。媒体に縛られず、顧客の伝えたい情報を形にすることを重視しています。

駅内のデジタルサイネージ
様々な形で情報を伝えてきたタテイシ広美社さん

「弊社は、お客様が伝えたい情報を的確に伝えるということを第一に考えています。また、“こういう場所に、こう設置したい”と望まれるものに対し、決して『NO』とは言いません。例えば、百貨店のショーウィンドウのわずかなスペースに配置する看板も、一から設計して製作し、設置まですべて行います。お客様のどんなご要望にも、オーダーメイドでお応えする。それが当社の強みなんです」

そのこだわりは全国各地からの受注にも広がっています。地元商業施設の看板に止まらず、東京2020オリンピック競技大会や大阪・関西万博でのデジタル掲示板の製作など、常に新たな技術で多様な「情報伝達」を担っています。
また、同社の社風を象徴する言葉が、備後弁で“炭が静かに赤く灯り続ける状態”を表す「いこる」です。

国立競技場の看板
国際的なビックイベントでも活躍されています

「社員一人ひとりが静かな情熱を持ち続けることで、その熱は次第に周囲に伝わり、会社全体へと広がっていく。社長以下、社員全員がいつも意識している言葉です」

そんな“熱”のある会社は、社員だけでなくその家族も大切にする文化も定着しているとか。さらに、地元の小学生の工場見学を積極的に受け入れるなど、地域に開かれた企業としての顔も持っています。こうした企業文化の中で、『onogo』の開発は自然に会社全体の挑戦として広がっていったようです。

ONOGOの箱を持ったスタッフ
タテイシ広美社さんのものづくり魂が吹き込まれた『onogo』
一体どんな囲碁体験ができるんでしょうか?

最新技術を駆使して完成!ボードゲーム要素を含んだ囲碁

囲碁を題材にしたTVアニメ「ヒカルの碁」から着想を得た村上さんの原案は、見た目の美しさだけでなく、機能面も考え抜かれていました。デザインも秀逸で、ほぼ手を加えていません」と、天野さん。

ONOGOの箱を開けた写真、説明書とボード、カードと碁石の入った袋が入っている
箱を開けるとシンプルだけどおしゃれなデザイン

コロナ禍以後、不要になったアクリル廃材を盤面に再利用したところも、プロダクトの価値を高める要素だったそうです。タテイシ広美社はこの原案を尊重しつつ、長く使えるクオリティを実現するため、天野さんを中心に試作と検証を繰り返します。

「アクリルに碁盤の目を刻む作業では、その太さや深さをレーザーカッターの照射度を微調整しながら、最適なものを探っていきました。また、碁盤の間に差し込むデザインシートは、カラー印刷で鮮やかな色合いを出した後、UV加工で定着させています。村上さんがデザインした、瀬戸内の多島美と尾道水道の水面の美しさを再現するには、この加工が最適。もちろん、耐久性も抜群です」

レーザーカッターが動く様子
普段見ることのないレーザーカッターの動く様子にワクワクしてきました
役目を終えたアクリル廃材に命が吹き込まれていきます

さらに碁石にも厚みのあるアクリル板を利用し、持ちやすさや適度な重さなども重視とか。

「大きさや厚みの違いを何度も試作して比較しながら、もっとも手に馴染む理想的な形を見極めていきました。完成した碁石は渾身の一作です」

ONOGOの盤面と碁石を持つ手の写真
一般的な碁石とは違う特徴的な形
大人から小さな子まで持ちやすい形ですね

その過程では、社内の技術者によるアドバイスも度々あったといいます。

「私一人のアイデアでは、商品化には到底辿り着けません。この道何十年ものベテラン社員がいたからこそ、納得いく出来に仕上がったと思っています。おかげで、村上さんも完成した商品を見て喜んでくれました。そもそも、村上さんのデザインがあったからこそ商品化できた『onogo』なので、私としてもほっとしています」

『onogo』の特徴は他にも。一般的な囲碁は19路盤ですが、7路盤の『onogo』は1局15〜20分ほどで完結し、初心者でも気軽に楽しめる設計です。また、付属のギミックカードには本因坊秀策のエピソードが盛り込まれ、囲碁の歴史も学べる構造に。囲碁でありながら、ボードゲームとしての要素も満載で、親子や友人同士のコミュニケーションツールとしても活躍します。

ギミックカードの一覧
様々なルールが記載されたギミックカード
一気にゲームに深みがでそうで面白い!

「囲碁を難しく感じている人にも、遊びながら親しんでもらえる。そこに『onogo』の価値があると思います」

こうして、学生の発想と企業の技術が重なり、『onogo』はプロダクトへと磨き上げられていったのです。

展開が早く、飽きさせない!世代問わず楽しめる「onogo」

『onogo』のクオリティの高さは、ロゴマークを含めたパッケージからも伝わります。瀬戸内の島々が描かれた箱にはアート作品としての魅力もあり、村上さんのデザイン力が光ります。

ONOGOのパッケージデザイン
囲碁や瀬戸内を感じさせる繊細で静かな、それでいてインパクトのあるデザインです

また、碁石が納められた自然素材の袋は、ナチュラルテイストでかわいらしさもプラス。
そして、なにより美しいのが碁盤です。水面のきらめきをイメージできるその碁盤にデザインシートを差し込めば、穏やかな海に恵まれた尾道の景色が広がります
さらに、丁寧な「遊び方の説明書」に加え、秀作の生涯を記した「本因坊秀策物語」が添えてあるのも嬉しい要素

ONOGONOの碁盤、説明書などを俯瞰で写した写真
どれも波がモチーフになっていて素敵です
本因坊秀策物語もぜひ読んでみて下さい

では、囲碁初心者の私も、早速、試してみることにしましょう。対局相手は、これまた初心者の小学1年生の孫。この際、年齢差は考慮せず、本気で望みます!

まずは「五目並べ」から。事前に2人で説明書に目を通していたので、なんとなくルールは頭に入っています。先手は黒の孫。迷いながらも、最初の石は中央に。私もそれに応じて、近くに白を配置します。お互い、5つ並べようと首をかしげながら碁盤を覗き込みます。縦に斜めにと何度かやり取りを繰り返し、気付けば黒の石が斜めに5つ。孫の勝利です…。
その後も数回対戦しましたが、私が勝ったのは1度きり。悔しいものの、孫の頭の柔らかさと先読みの力に脱帽でした。

ONOGOで遊んでいる様子
展開が早いので何度も飽きずに楽しめました
くやしかった!

次の「石取り」では、孫の一手に翻弄されながらも、なんとか祖母の意地を見せようと攻めたり逃げたり。ですが、結果はこれまた孫の圧倒的勝利。参りました!
その後は孫の友人も加わり、小学生対決です。初めての囲碁とは思えないほど、真剣な表情で対局する子どもたち。一瞬でひっくり返る戦局に、2人の息を呑む様子が伝わり、囲碁の面白さを目の当たりにしました。
囲碁の歴史が書かれた付属の「ギミックカード」を取り入れるまでには、もう少し慣れが必要ですが、ボードゲームとしての楽しさが増すのは間違いありません。

今回は全員が囲碁初体験でしたが、思った以上にルールがわかりやすく、すぐに熱中。7路盤はわずかな時間で決着が付き、展開の速さがまた、飽きさせない理由だと実感しました。さらに印象深かったのは、子どもたちが何度も口にしていた「キレイ!」という言葉。碁盤の美しさは、彼らの心にも響いたようです。

波モチーフがデザインされた基盤
すりガラスのような美しさ
波のデザインが素敵です
瀬戸内の島々がデザインされた基盤
瀬戸内の風景と囲碁がうまく融合した秀逸なデザイン

「村上さんのデザインには、私が惹かれる尾道のゆったりとした空気感が生かされています。旅で出会った尾道の景色をそのまま家に連れて帰れるような、そんな存在になれば嬉しいですね」

このまちの魅力を感じながら、誰でも手軽に楽しめる『onogo』、ぜひ皆さんも試してみてはいかがでしょうか。

現在、『onogo』は公式通販サイトの他、下記店舗で購入することができます。

  • 尾道市:尾道市立美術館、本因坊秀策囲碁記念館、尾道ええもんや、尾道ええもんや 尾道駅前店、ロープウェイ前 ええもんや、新尾道駅 ええもんや
  • 広島市:おりづるタワー

会社の紹介

株式会社タテイシ広美社
住所:〒726-0025 広島県府中市河南町114
電話番号:0847-43-4886

公式ホームページ