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瀬戸内の穏やかな海と、路地ごとに表情を変える坂のまち・尾道。
観光客が海岸通りを歩けば、ひときわ鮮やかな赤い外観が視界に入ります。それが、地元の人々にも観光客にも長く愛されてきた「尾道ラーメン 壱番館」です。

尾道ラーメンといえば、鶏ガラをベースにした出汁に醤油を加えた濃厚なスープと、そこにたっぷり浮かぶ豚の背脂。瀬戸内で獲れた小魚の香りがほんのりと鼻に抜けるのも特徴です。素朴ながらも奥行きがあり、観光で訪れる人にとって尾道らしさを味わえる一杯として記憶に残ります。
そのなかでも、壱番館は「行列の絶えない店」として知られています。
人気を支えているのは、インパクトのある派手な味ではなく、誰にでもすっと馴染むやさしいおいしさ。株式会社 壱番館の代表、井上 将吾(いのうえ しょうご)さんは、その味づくりについて話します。
「壱番館のラーメンは、子どもから高齢の方まで、どんな世代の方でも食べやすい味に仕上げています。醤油の角を立たせず、背脂の甘みや小魚の香りが調和し、全体にまろやかさが残るようにしているんです。SNSでは『普通においしい』と書かれることもありますが、その普通を磨き続けるのが一番難しいんですよ」

深みがありながらもあっさりとしたスープは、平打ちのちぢれ麺にもよく絡み、口に運ぶたびにやさしい旨味が広がります。「帰る前にもう一杯食べたい」「お土産を買って帰りたい」と思わせるようなラーメンです。
そんな壱番館には、他店とは異なる一風変わった歩みがあります。
実はこの店、一般的なラーメン店とはまったく逆で、お土産のラーメンが先に生まれ、あとから店舗が誕生したという珍しい歴史を持っているのです。

今回ご紹介するのは、そのお土産として愛されている『尾道生ラーメン』。誕生に至った経緯や、おいしさに隠された秘密を詳しく伺います。
壱番館の歩みは、店が誕生するおよそ10年前までさかのぼります。はじまりは、お土産物として開発されたラーメンでした。
今でこそ、尾道ラーメンは全国的にも有名ですが、1990年前後は、まだその呼び名すら一般的ではなかった頃。多くの店の暖簾には「中華そば」の文字が並び、ご当地ラーメンとしての枠組みはほとんど存在していませんでした。
そのなかで、壱番館の前身となる会社の先代が「専門店の味を家庭で再現できる本格生ラーメン」を作ることを決意します。

「家庭で食べるラーメンといえば即席めんが主流で、お店の味そのままを家で楽しむという発想はほとんどなかった時代です。だからこそ先代は『誰が作っても味がぶれない、お店で味わうような生ラーメンを作りたい』と考えたんです。とはいえ、全くの素人でしたので、本当にゼロからの挑戦でした」
そして試行錯誤の末に誕生した『尾道生ラーメン』は、観光客より先に尾道の地元の人に受け入れられていきます。「家で手軽においしい尾道ラーメンが食べられる」と評判になり、徐々にその存在が知られるように。

また、ほどなくして尾道のまちにも追い風が吹きます。
大林宣彦監督の映画の舞台を訪れる聖地巡礼、新尾道駅の開業、しまなみ海道の全線開通など。1990年代後半、尾道は観光地として一気に注目を浴び始めました。
そして、2005年に公開された映画「男たちの大和/YAMATO」の撮影により、『尾道生ラーメン』は尾道を訪れる観光客に知られるようになりました。
「尾道全体に人が来るようになった時期と、『尾道生ラーメン』の評判が重なったんです。本当に、時代の流れが味方したんだと感じます」
やがて、「お店でも食べてみたい」という声が広がり、壱番館は海岸通りに実店舗を構えます。しかし、最初から順風満帆とはいかなかったようです。


「オープンから数年間は、クレームが絶えなかったんですよ。お土産のラーメンの味をそのまま再現しているはずなのに、調理経験が豊富なスタッフが少なかったこともあり、めざす味に届いていなかったんです」
ここで大きな転機となったのは、現店長の就任でした。和食料理人として腕を磨き、味づくりの土台を知る人物が厨房に入ったことで、壱番館の味は一気に安定していきます。

こうして「お土産から始まり、店舗の味が追いついた」という、ラーメン店としては珍しい進化を遂げたのが壱番館なのです。
壱番館のおいしさの決め手は、スープの核となる厳選した醤油と良質な背脂、そして平打ちのちぢれ麺です。

特にスープは、「尖らせず、まろやかに」が徹底されており、どの世代でも食べやすい味に調整されています。
「背脂の品質が良くないと、せっかくのスープの味が損なわれてしまうんです。醤油や小魚、野菜の出汁と合わさったときに生まれる調和のとれた旨味が大事なので、背脂の質は絶対に妥協しません」
また、醤油も一種類ではなく、香りや味わいの違う二種類をブレンド。名古屋のメーカーと約3年の開発期間を経て作り上げた、オリジナルの配合です。
「醤油だけでスープ全体の印象が大きく変わります。それだけに、どの醤油をどう組み合わせるかを見極めるのは大変な作業だったと聞いています」

さらに井上さんは、創業時の味を変えないことこそもっとも難しく、なによりも大切な使命だと強調します。
「当時の味を守り続けることは、新たに作り出すことよりも難しいんです。今のように仕入れや製造のコストが上がっても、とにかく味を変えない。それは、このラーメンを作った先代への誓いのようなものです。企業努力を惜しまず、『この味をぶらすようなことだけは絶対しない』というのが私たちの約束です」
一方、尾道ラーメンには珍しい平打ちのちぢれ麺は、広島県北東部に位置する上下町の工場で作られています。中国山脈から湧き出る地下水が、麺の風味に驚くほど影響しているとか。
「小麦が最初に吸収する水は、麺の風味や味に大きく影響するんです。上下町の地下水は県内でも屈指の水質で、壱番館の麺のおいしさを支えてくれています。
ただ、生麺の腐敗を防ぐためには、水分量を極力抑えることも条件。最小限の水で丸1日かけてしっかりと生地を練り、さらに1日熟成させてから麺に仕上げています」

壱番館のこだわりは、それだけではありません。あえてスーパーマーケットには商品を置かず、他の尾道ラーメンとは一線を画しています。
「スーパーという土俵で、他の尾道ラーメンと競おうとは思ってないんです。もちろん、販売数は増えますしメリットもたくさんありますが、壱番館が大切にしたいのはブランド力。たくさん並んだ商品の中の1つではなく、壱番館のラーメンを食べたい、と思って選んでいただきたいんです」
そのため、現在販売されているのは、尾道市内やJRのお土産物店や高速道路のサービスエリアなど、尾道を訪れる人の目に触れやすい場所に絞られています。
さて、私の目の前にある壱番館の『尾道生ラーメン』ですが、そのパッケージは、飾らずシンプルそのもの。赤を基調にした説明書の中央には「一杯のラーメン。はじまりは通販だった。」というフレーズが添えられ、お土産からラーメン専門店開店へと成長した歴史を読み取ることができます。
長年、ファンを魅了するその味。私もいただいてみることにしましょう。
作り方は、説明書に従ってスープ用のお湯を沸かすところから。300〜350ccをどんぶりに注いでスープの素を溶かし、同時進行で、鍋たっぷりのお湯で平打ちのちぢれ麺を茹でます。茹で時間はわずか1分〜1分半ほど。さっと茹で上がったところでしっかりと湯切りし、スープの入ったどんぶりへ。
井上さんおすすめの、炒めもやしもたっぷりトッピングします。

では早速スープから。醤油の香ばしい香り、そして口に含めば、醤油のやわらかな味わいと鶏ガラのあっさりとした出汁のうまさが広がります。醤油ベースのラーメンによくある尖った味わいではなく、あくまでもまろやか。ほんのり浮かぶコクのある背脂と小魚の風味もあいまって、どこまでもやさしく後を引くおいしさです。
続いて麺を啜ると、平打ちのちぢれ麺にスープがよく絡まり、小麦本来の風味とのマッチングが絶妙。コシのある歯ごたえも抜群です。さらに、炒めたもやしとの相性も良く、すべての素材がラーメンそのもののおいしさを押し上げていると感じます。
食べ終わりまで深い味わいが続き、飽きのこない完成度に脱帽。家庭で手軽に、ここまでのクオリティが味わえるとは!まさに尾道ラーメンを代表する逸品だといえます。

「誰にでも受け入れていただける『普通のおいしさ』を大切にしてきましたが、これからはさらに多くの方にこのラーメンを味わっていただきたいと思っています。国内に限らず、海外の皆さんにも愛されるラーメンをめざしていきたいですね」
奇をてらうのではなく、あくまでも「普通のおいしさ」を追求してきた壱番館。
その普通が、「もう一度食べたい」きっかけとなり、尾道というまちで長く愛され続けている理由なのだと感じます。

現在、『尾道生ラーメン』は通販サイト Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピング、公式ホームページの他、下記店舗で購入することができます。
長く愛され続ける尾道の味をぜひお楽しみください。