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2026.01.25 2026/01/26

【鮎の甘露煮】創業120年!老舗旅館の味を受け継ぐ逸品

※写真の無断転載はお控えください。

備後の中心地、「府中」の老舗・無憂舘

広島県東部に位置する府中市は、かつて備後国の国府が置かれ、政治や経済、文化の中心として栄えたまち。現在でも、家具産業や金属加工など職人の技術を基盤とした「ものづくりのまち」として知られ、長い歴史の中で培われてきた文化が根を張っています。

府中の街並み
歴史を感じる白壁の建物が並ぶ府中・上下の街並み

その府中市で、創業から120年以上にわたり一つの味を守り続けてきたのが、老舗・無憂舘(むゆうかん)。看板商品は、飴色の照りが美しい『鮎の甘露煮』です。

そもそも甘露煮とは、冷蔵技術がなかった時代、旬の魚を長く味わうために生まれた「保存の知恵」の結晶。その名の由来は、仏教用語で天から降る不老不死の霊液「甘露(かんろ)」にあります。とろりと煮詰まった煮汁の輝きと、滋味深い味わいが「天の恵み」に例えられ、その名がついたと言われています。

店頭に陳列されている箱入りの鮎の甘露煮450g 4980円
無憂舘さんの店内には鮎の甘露煮がずらり

ここ府中市がある備後エリアもまた、豊かな水源と共に鮎を愛でる文化が深く根付いてきた土地柄。ものづくりのまちで職人たちが技術を磨き上げてきたように、無憂舘もまた、この伝統的な「食の技」を芸術の域まで高めてきました。

今回は、無憂舘の5代目を引き継ぐ星野 裕(ほしの ゆたか)さんに、『鮎の甘露煮』に込められたこだわりと、継承される想いについてお伺いしました。

店舗前に立ってインタビューを受ける無憂館の5代目星野 裕さん
快く取材を受けてくださった5代目 星野さん

割烹旅館から鮎の甘露煮専門店へ。その理由は、確かなおいしさ

平安時代の法典「延喜式」にも、この地域の鮎が特産品として記されており、かつては朝廷へ納められていたという歴史があります。 そうした歴史の中で、他の調理法よりも保存の面で優れているという理由で受け継がれてきたのが、甘露煮です。

流行に左右されることなく、地域の暮らしの中で育まれた味は、この地域の歴史とともに息づいています。

ざるの上に盛られた鮎
そんなに古い時代から鮎は親しまれていたんですね

無憂舘の創業は明治35年(1902年)。当初は、割烹旅館としてスタートしました。
旅人を迎え入れ、食事を提供する宿として、備後地方を行き交う人々の拠点だったといいます。

「店名の『無憂舘』は、“憂いなく、楽しくお酒を飲む場所”という意味で付けられたと聞いています。人が集い、食と酒を囲み、心を解きほぐす場でありたいという思いが込められていたようです」と、星野さん。

創業当時の無憂館の白黒写真
創業当時の「無憂舘」。モダンな建物が当時のまちの賑わいを感じさせます

しかし、時代が進み戦後を迎えると、旅の形や人の流れが変化し、宿泊客は徐々に減少していきます。その一方で、割烹旅館時代から提供していた鮎の甘露煮が評判を集めるように。

「当時、家業を取り仕切っていた祖父が、思い切って旅館をたたみ、料理としてお出ししていた『鮎の甘露煮』一本でやっていこう、という判断をしたようです」

こうして、無憂舘は甘露煮専門店へと大きく舵を切ります。宿泊業を手放すことは、簡単な決断ではなかったはずですが、味への自信と客からの評価が背中を押したといえます。形態は変わっても、「良いものを作り、きちんと届ける」という姿勢は、創業から一貫して引き継がれています。

無憂館外観写真
現在の無憂舘
入口横の障子のようなデザインの窓が印象的です
無憂館店内写真
落ち着いた雰囲気の店内です

ちなみに、無憂舘 府中本店に掲げられた看板の文字は、正岡子規の高弟として知られる「河東 碧梧桐(かわひがし へきごとう)」が書したもの。
鮎を好み、鮎を題材にした句を詠んだ河東碧梧桐は、この無憂舘に立ち寄ったと伝えられています。その際に筆を取った作品は、今も店内で目にすることができます。

河東 碧梧桐が書いた作品
迫力ある作品に目を奪われます

伝統の味を生み出す、一子相伝のタレとこだわりの技術

無憂舘を率いる星野さんは、もともとプロのモトクロスレーサーとして活躍してきた経歴を持ちます。4代目である父の影響で小学校高学年の頃からバイクに親しみ、17歳にしてプロに昇格。全日本モトクロス選手権では最高峰クラスで活躍し、海外レースにも参戦するなど、第一線で走り続けてきました。その後、2023年に現役を引退し、家業を継ぐことを決意します。

額縁に飾られたモトクロスのレース中の写真
これが星野さん!?
レーサーから甘露煮専門店へ異色の転身ですね

「若い頃から、いずれは継ぐことになるだろうと思ってはいたものの、正直、モトクロスの方が楽しかったんです。ですが、40歳を前にレーサーとして納得のいくようなパフォーマンスができなくなって引退。それを機に家業を手伝うようになって2年が経ちます。5代目を名乗るにはまだ修行が必要ですが、今は、鮎の甘露煮でトップを目指そうと取り組んでいます」

その笑顔からは、モトクロスの世界で活躍していた頃と同じ、強い意志も感じます。そして現在、星野さんが情熱を注ぐ『鮎の甘露煮』。その特徴について次のように説明します。

「僕が関わるようになって以来、鮎は岐阜県から仕入れています。身がふっくらとしていて、旨みがあることが理由です。そのおいしさを最大限に引き出せるよう、味付けも製造工程もかなりこだわっています」

味付けの基本となるのは、醤油と砂糖、そしてごく少量の酢。それらを調合し、秘伝のタレを作ります。作り方は一子相伝。創業当初から代々、守り続けてきた味です。

カメに入れられた秘伝のタレ
お店の命といっても過言ではない秘伝のタレを見せていただきました

「これまで受け継いできた味を変えるつもりはありません。一子相伝という言葉の通り、この味を守るのが僕の使命だと思っています」

また、無憂舘の『鮎の甘露煮』のおいしさは、調理法からも生まれます。頭から尾まで、骨を含めて丸ごと食べられるようにするには、6時間にも及ぶ煮込みが必要なのだとか。

「骨まで柔らかく食べられる、とお客様からよく言っていただきます。肝心なのは、弱火でじっくりと火を通すこと。タレがグツグツと沸騰してしまうと煮崩れしてしまいますので、その間は、目を離すことができません」

甘露煮をつくる星野さんの横顔
真剣なまなざしの星野さん
6時間続く気の抜けない調理…た、大変!

とりわけ難しいのは、創業当初からの味を損なわないこと。継ぎ足しで使い続けるタレが、煮込み具合によって濃くなったり、薄くなったりすることがないよう、火加減には細心の注意を払うといいます。とはいえ、その味を見極める繊細な感覚は、血筋を受け継いだ星野さんだからこそ培われたものなのかもしれません。

口の中に旨みとコクが押し寄せる!絶品の「鮎の甘露煮」

今回ご紹介する『鮎の甘露煮』には、普通の鮎と子持ち鮎の2種類があります。

祝い事や正月には、縁起物として子持ち鮎が食べられることも多いとか。いずれも真空パックされており、封を切ればそのまま食べられる手軽さも魅力です。さらに、鮎の姿の美しさも目を惹きます。甘辛いタレに包まれた鮎は表面に艶をまとい、思わず見入ってしまうほどです。

皿に盛られた鮎の甘露煮
上が子持ち鮎、下が普通の鮎
どちらも肉厚で美味しそう

さて、「おすすめの食べ方は、炊き立てのご飯と一緒に」と星野さん。

どのようにいただくか迷うところですが、まずは一口大に切って、おすすめ通り炊き立てご飯と一緒にいただいてみましょう!

箸を入れると、驚くほど身が柔らかいことに気づきます。まずはひと欠け、白米に乗せて口へ。その瞬間、じんわりとした濃厚な旨みが口いっぱいに広がりました。川魚特有の生臭さは全くなく、あるのは鮎と秘伝のタレの美味しさだけ
タレの甘辛さと鮎の凝縮された旨みが、白米本来の甘さをぐっと引き立て、噛めば噛むほど味わい深くなっていきます。味がしっかりと染み込んでいるため、ほんのひと欠け口にすれば、もうご飯を持つ箸が止まりません。「ご飯がすすむ」とはまさにこのことです。

また、6時間炊き上げた技術は伊達ではありません。頭も骨もホロっと柔らかく、魚の骨が苦手な方でもそのまま食べられますよ。子持ち鮎であれば魚卵のプチプチとした食感が、味わいにさらなる奥行きを加えてくれます。
ぎゅっとした歯ごたえの頭や骨、少し苦みのあるワタ、ふっくらとした胴体、タレの味がよく分かるしっぽのヒレの先までそれぞれの美味しさがあり、気づけば丸々一匹完食していました。

『鮎の甘露煮』のおいしさに触れ、120年愛され続けてきた理由にも納得。これぞまさに、伝統の逸品です。

ごはんに盛られた一切れの甘露煮
派手ではないけど身体に沁みるような美味しさ
至福の一口でした…♪

王道の食べ方以外にも、楽しみ方はさらに広がります。
一尾そのままを使った炊き込みご飯もおいしいとか。袋に入ったタレも一緒に炊き込むと、風味豊かな鮎ご飯の出来上がりです。お茶漬けやおにぎりの具にも良いそうで、鮎のおいしさを存分に味わえます。 さらに、ワタのほのかな苦味が甘辛いタレにちょうどよく絡まり、日本酒の当てにもぴったりだそう。

日本酒とお皿にも盛られた鮎の甘露煮
甘辛い甘露煮にお酒が進みそうです!

「これまで受け継いできた味を楽しんでもらい、ここ府中市を知っていただくきっかけになればと思っています。また、鮎の甘露煮というと、大人の食べ物という印象を持たれがちですが、ぜひ若い世代にも味わってもらいたいですね。長く親しまれてきた味ですから、きっと受け入れていただけると思っています」

『鮎の甘露煮』一本で、長い歴史を刻んできた老舗・無憂舘。 一子相伝のおいしさが、次の世代へと受け継がれていくことを願わずにはいられません。

現在、『鮎の甘露煮』は通販サイト 楽天市場(ふるさと納税)、Yahoo!ショッピング(ふるさと納税)、公式通販サイトの他、下記の店舗で販売中です。

  • 府中市:無憂舘 府中本店、天満屋ストア府中天満屋、浅野味噌鷹屋、進吾府中店、道の駅びんご府中
  • 福山市:無憂舘 福山店、天満屋福山店
  • 尾道市:進吾御調店
  • 神石郡:道の駅さんわ182STATION
  • 東京都:広島県府中市アンテナショップ NEKI

お店の紹介

無憂舘 府中本店
住所:〒726-0005 広島県府中市府中町160-1
電話番号:0847-41-2536

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