備後地域で愛される逸品を知る。

2024.11.05 2024/11/05

希少な備中大納言小豆を使用!岡山土産【やまんぼう】

井原の人々に愛され続ける銘菓「やまんぼう」

岡山県の西端に位置する井原市。
JR井原駅を中心とする市街地から車で数分の距離には豊かな田園地帯が広がり、北部には「日本の美しい星空三選」にも選ばれた美星地区を有します。都会ではなかなか手にすることができないその恵まれた自然環境に惹かれ、近年では移住を決意する人も多いまちです。

古くは弓の名手として有名な那須与一が源平の合戦で扇の的を一矢で射落とした軍功により、備中荏原荘(今の井原市)に所領を与えられ、那須一族がこの地に移り住みました。ゆかりのお寺や那須与一の供養墓があり、ここを訪れることができます。
井原市は那須与一にゆかりがあることから、JR井原駅のデザインは弓矢をモチーフにした駅舎になっています。

井原駅を正面から撮った写真
井原駅
斬新なデザインがかっこいい!

訪れたのは、井原市の中心部で和菓子屋を営む「やまんぼう本舗(久津間製菓)」。戦後の創業時より、このまちの人々に愛され続けている御菓子司です。
自家製のあんこを使った和菓子はもちろん、岡山県産の果物を活かしたゼリーや、デニム生産が盛んな井原にちなみ、インディゴを生地に練り込んだクッキーなど数多くの商品を手掛けています。

やまんぼう本舗の店舗外観写真
やまんぼう本舗さん
藍色の看板が目印です
やまんぼう本舗の店内写真
凛とした雰囲気の店内には和菓子がずらり

中でも唯一無二の味わいを誇る和菓子が、銘菓『やまんぼう』
人間国宝である備前焼陶芸家、藤原啓にも愛され、「備前焼にもっとも似合う和菓子」と言われた逸品です。

今回は、『やまんぼう』のおいしさを決定づけるあんこに、岡山県産の小豆「備中大納言」を使用した『やまんぼう 備中大納言』をご紹介します。

『やまんぼう 備中大納言』の箱が黒いお盆に載っている写真
こちらが備中大納言バージョンのやまんぼう

新幹線開通で岡山土産としての人気を獲得!「やまんぼう」

やまんぼう本舗の3代目当主である久津間 茂明(くつま しげあき)さんに、まずは、店舗兼工房裏手にある小田川の堤防に続く「井原堤の桜並木」を案内していただきました。

「やまんぼう本舗」3代目当主の久津間 茂明さんの写真
素敵な笑顔の3代目
色々教えていただきました

「この桜並木の全長は2kmにも及び、春になるとお花見客でとても賑わいます。小田川の上流にはダムがありませんので、中国山脈に降り注いだ雨がそのまま清らかな伏流水となり、この川に流れているんです。豊かな水のおかげで、『やまんぼう』の決め手となる自家製あんこは、とても上品な味わいに仕上がります」

自然の恵みを享受した和菓子作りを受け継ぐやまんぼう本舗の創業は、昭和27年。
茂明さんの父である先代が無類のお菓子好きだったことが、お店を立ち上げる一番の理由だったようです。

そもそも、明治時代にアメリカでスーパーマーケットを経営していたという久津間家。異国の地で大きな商売を成功させていたようですが、家督を継ぐという理由で帰国した先々代は、それを機に、井原の地で造り酒屋を始めます。

今も残る酒蔵として使われていた建物の写真
酒蔵として使われていた建物
歴史を感じる佇まいです

商売の才に恵まれていた先々代は酒屋としても成功し、醸造したお酒の大半を広島県呉市にあった日本海軍に卸していたとか。

「ただ、戦後の軍解体により商売に翳(かげ)りが見え始めたようです。そこで、次男だった父が和菓子屋を始めたと聞いています」と久津間さん。

創業からしばらくは饅頭や最中など一般的な和菓子作りに専念していたそうですが、高度経済成長期を迎え、さらに多くの人に愛される和菓子を作りたいという思いで考案したのが『やまんぼう』。昭和44年のことだったといいます。

店頭で販売されている『やまんぼう』の写真
昭和44年から現在まで、多くの人に愛されることになります

「父には先見の明があったようですね。その数年後に山陽新幹線がJR岡山駅まで開通するや否や、岡山には多くの旅行客が押し寄せました。そこで、お土産物として人気を集めたのが『やまんぼう』。以後、『やまんぼう』は、当店にとって押しも押されぬ看板商品となりました」

希少な備中大納言小豆を使い、手作業で作られる「やまんぼう」

さて、先代が考案した『やまんぼう』、いったいどんな和菓子なのでしょうか?

「あんこを棒状に成形し、そこに甘く煮た四国産のやわらかな栗を入れ、そぼろ状にしたクッキーに近い生地をまぶして焼き上げたものです。
おいしさの決め手はあんこ。特に、『やまんぼう 備中大納言』のあんこには、通常の『やまんぼう』で使用する北海道産の小豆ではなく、岡山県北部で栽培されている備中大納言小豆を使用していますので、さらに上品でやさしい味わいに仕上がっています」

そう、今回ご紹介する『やまんぼう 備中大納言』は、あんこの材料として、全国的にも希少価値の高い「備中大納言小豆」を使用。品質の良さは、京都特産の「丹波大納言小豆」と同格とも称され、舌触りの滑らかさと口どけの良さは他の小豆とは別格です。

山盛りの備中大納言小豆の写真
「赤いダイヤ」とも称される備中大納言小豆

「ただ、小豆の特徴を最大限に引き出すには、あんこの炊き方がなによりも重要なんです。秘伝の製法ですので詳しいことはお話できませんが、一般的なあんことの違いは、食べていただければすぐにお分かりいただけると思います。口に入れた瞬間に広がるやさしい甘味や、上品な味わいに驚かれるはずです」

銅鍋であんこを作っている様子の写真
熱伝導率の高い銅鍋でじっくりことこと炊かれたあんこ

さらに、「和」の象徴とも言えるあんこに、バターが練り込まれた「洋」の生地を組み合わせ焼き上げる、というアイデアも斬新。「これには、お菓子好きだった先代が学生時代に過ごした神戸の街が影響しているのかもしれない」と、久津間さんは話します。

「学生だった父は、神戸の街に並ぶ洋菓子の老舗に通い詰めていたんだと思いますよ。味はもとより、素材や食感、色形など、ありとあらゆるおいしいお菓子を味わった経験が根本になっているんでしょうね」

そして、こちらも興味深いのが『やまんぼう』の形状。その昔、山に暮らす人々が里の人へのお土産にしていた、木の実や山菜を藁で包んだ「苞(づと)」にちなんでいるそうです。

「山から持参した苞を模した棒状の和菓子、ということから、『やま』『づと』『ぼう』をつなげて読み、『やまんぼう』と命名したと聞いています」

『やまんぼう』の全体写真
和菓子では中々見ない面白い形ですね

岡山の小さなまちからお土産物として全国へ届けられる『やまんぼう』。
「井原市を、そして岡山県を代表するような銘菓を作りたい」との願いは実を結び、今でも全国各地から店舗を訪れる人があとを絶たないそうです。

すべて手作業で作られている銘菓は、あんこ作りから焼き上げまで、丁寧に作業を行うことで多くのファンを魅了していますが、加えてそこには、「常においしいものを届けたい」という久津間さんの揺るぎない姿勢も反映されています。

三代目が店内でインタビューに答える写真
やまんぼうには久津間さんの真剣な想いが詰まっています

「すでに何十年も作り続けている『やまんぼう』ですが、材料に関してはその時々でもっとも良いと思える素材を厳選しています。現状に満足することなく、少しずつでもレベルアップしていきたいと思っているんです。お客様が口にしたとき、『前よりもおいしくなっている』と感じていただきたいですね」

素朴ながらも、あんこの上品な甘さに素材の良さが際立つ逸品

さて、この『やまんぼう 備中大納言』、製造からの日数で味わいと食感が徐々に変化していくそうです。

「できあがりから3日間ほどは、焼き菓子の香ばしさを感じていただくことができます。そこから日が経つにつれ、あんこが持つ水分が外側を包む生地に浸透していくことで、全体的にしっとりとした食感に変わっていきます。もし、できたての香ばしさを味わいたいのなら、オーブントースターでの加熱がおすすめです」

ということで、まずは一口大にカットしたものをそのままいただいてみますね。あんこの艶々としたつぶ感と、ちょこんと覗く栗に期待が膨らみます。

一口大にカットした『やまんぼう 備中大納言』の写真
香ばしい生地にぎっしり詰まったあんこ
あんこ好きにはたまりません!

口に含んだ瞬間に感じるのは、生地とあんこのやわらかな一体感。外側に施されたケシの実のぷちっとした食感も良いアクセントになっています。

通常のやまんぼうも自家製つぶしあんがたっぷり詰まっており、大変美味しかったのですが、備中大納言の方はまた違ったおいしさがあります。

あんこの上品な甘さと、しっとりとしていてつぶ感が感じられる食感は格別です。
やさしい余韻とともにスッと溶けていき、さらに甘く煮含められた栗のやわらかさも絶妙。素朴な味わいの中に、素材の良さと職人の技術力の高さを感じます。

さらに、オーブントースターで5分ほど加熱し、できたてのおいしさを再現。

こちらは、常温のものと比べると生地のふんわり感と香ばしさ、さらにあんこの上品な甘さが際立つ印象。素材それぞれの風味も増し、焼き菓子としてのおいしさを楽しめます。

トースターで焼いた『やまんぼう』を半分に切った写真
香ばしい生地と温かい餡子が口の中でホロっと溶けていく…

一緒にいただく飲みものは、温かいほうじ茶や緑茶で。和菓子を味わいつつ、心が解けていくのを感じます。岡山の小さなまち井原市からお届けする逸品、ぜひ皆さんも味わってみてはいかがでしょうか。

「関東で長年修行を積んできた息子が、現在4代目として『やまんぼう』はもちろん、和菓子の製造を率いてくれています。先代から受け継いできた技術と想いを新たな和菓子作りにも活かしていければと思っています」

どら焼きの生地にあんこを乗せている職人の手元の写真
脈々と受け継がれていくやまんぼうスピリット

現在、『やまんぼう 備中大納言』は、通販サイト 楽天市場(ふるさと納税)、公式ホームページ、やまんぼう本舗、創作和菓子 富久味庵で購入できます。また下記の店舗では、『やまんぼう』を購入できます。

  • 岡山県:JR岡山駅、天満屋 岡山本店、天満屋 倉敷店、岡山タカシマヤ
  • 広島県:天満屋福山店、天満屋福山ポートプラザ店、天満屋府中店

お店の紹介

やまんぼう本舗(久津間製菓株式会社)
住所:〒715-0019 岡山県井原市井原町1525
電話番号:0866-62-0276

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