瀬戸内海を一望する木造校舎で作られる『ミニ財布』
手にするだけでワクワクしたり、ずっとそばに置いておきたいと思えるアイテム、皆さんはお持ちですか?
今回ご紹介する「SIRUHA(シルハ)」さんの『ミニ財布』は、まさにそんなアイテム。「出掛けるための道具」として作られた逸品です。
訪れたのは、岡山県笠岡市。穏やかな瀬戸内海が一望できる絶景に建つ「シェアアトリエ 海の校舎」。
2018年まで地元の子どもたちが通った、旧大島東小学校の木造校舎をそのままに、現在は、様々な分野のクリエイターたちが日々、創作活動を行うシェアアトリエとして使われています。
そのアトリエの一室に工房を構えるSIRUHA。
帆布やデニムをはじめとした繊維業など、ものづくりが盛んな岡山の地で、使うほどに愛着が湧く「道具」を創作しています。
木の廊下に、木枠の窓、今でも子どもたちの笑い声が聞こえてきそうな「海の校舎」の工房で、SIRUHAの代表、藤本進司(ふじもとしんじ)さんにお話を伺いました。
「書くための道具」と「出掛けるための道具」
10年前より創作活動をスタートし、2年ほど前からはこの「海の校舎」に拠点を置くSIRUHA。ものづくりのコンセプトはどういうものなのでしょうか。
「書くための道具と、出掛けるための道具、この2つを軸に創作を行っています。
書くという行為はどちらかというと面倒だと思われがちですが、書くことによって自分がイメージしていることが明確になったり、アイデアが膨らんだりと、頭の中にあることを表現できる最も身近なアウトプットの方法だと思うんです。
それから、もう一つの出掛けるという行為は、景色を眺めたり、風を感じたり、人に会って話をしたり、そこから刺激を受けることで、自分が想像もしなかったインプットが可能になる方法です。
これらの「書く」と「出掛ける」という行為を、できるだけ気軽に身軽にできるような道具ということで、手帳や鞄、今回ご紹介していただく『ミニ財布』などを作っています。」
幼い頃より、「ものをつくる」という作業に心惹かれていたという藤本さん。
高校卒業後に就職した会社でも、自分の手を動かし「つくる」ことができる仕事に携わっていたと言います。ですが働いて数年、大きな組織だからこそ、経済的な安定は得られたそうですが、次第に、自分自身が望む暮らしからは離れて行くような、そんな感覚を味わうようになったそうです。
「20代前半で家族ができたことも理由の一つだと思うんですが、心地よい暮らしってなんだろうと考えることが多くなったんです。
働いていた会社では、収入など生活基盤においての安定はありましたが、同時にどこか不安定さのようなものを感じるようになりました。それは、普段の暮らしの中で自分で考え、自分で選択し行動することから生まれる「心地よさ」を感じられないことが原因だったような気がします。でも、その心地よさって、決して自分だけではなく、家族も含めて、誰もが暮らしの中で感じるべきもの。
それを実現するためには、まず、どんな人でも、自らの生き方や価値観を見つめることができる社会にならないと、と思ったんです。そんな社会をつくるために、僕ができることは何だろうと」
誰もが「やってみたい」と感じたことに、素直に取り組める環境をつくること。それが自分にできることであり、自分がやりたいこと。
藤本さんは、その気付きを得て会社を退職、SIRUHAを立ち上げます。
そこから始まったものづくり。まずは、自分のやりたいことを見つけていくインプットとなる「出掛ける」ための道具、そして自分の思いを表現するアウトプットである「書く」ための道具、これらに的を絞り、様々な作品を生み出していきます。
試作を重ね、たどり着いた使いやすい『ミニ財布』とは
さて、今回ご紹介する『ミニ財布』も、SIRUHAのコンセプトの1つである「出掛ける」ための道具。思わず出掛けたくなるような使いやすい工夫が施されています。
まずはコンパクトさ。
『ミニ財布』はその名の通り、できる限り小さく、邪魔にならないサイズで作られています。それはちょうど手のひらほどで、ポケットにスッと収まる大きさ。例えば、ジーンズの後ろポケットはもちろん、前ポケットに入れても違和感がなく、また、上着のポケットにも無理なく収まります。「ちょっと散歩にでも」、そう感じた時に、気軽に持ち歩けるコンパクトさです。
次に機能性。
常に持ち歩きたいものには、使いやすさが欠かせません。この『ミニ財布』の最大の特徴はこの機能性だとも言えます。本体の中には小銭用のポケット、そして外側にはカードやレシートなどが入れられるポケットがあり、お札10枚、小銭20枚、カード10枚を入れても余裕がある作りになっています。中でも、特筆したいのが小銭用ポケットの使い心地。ミリ単位で調整してたどり着いた浅めの設計は、取り出しやすさ抜群です。
一般的なお財布と比べても遜色のない収納量にもかかわらず、財布のふちにステッチミシンが施されているので、型崩れする心配もありません。
そして素材とデザイン。
手に馴染む素材で、なおかつデザイン性が優れていることも、持ち続けたいと思える大切な要素。こちらの素材には、地元岡山の倉敷帆布と児島デニムが使用されており、使うほどに手に馴染み、少しずつ風合いが増していきます。
単色のものや、帆布とデニムを組み合わせたものなど、その種類も豊富。また、イラストレーターや染色家とのコラボレーションで生まれたデザインもあり、自分好みの作品を選ぶことができます。
形状も、持つ人のシルエットが引き立つように考えられており、その人のファッションが生きるよう最大限にシンプル。さらにどんなシーンにも合わせやすいよう、落ち着いた色合いが採用されています。
使ってみて実感、出掛けることが楽しくなる『ミニ財布』
年齢や性別問わず、誰にとっても使いやすく、持ち歩きたくなる普遍的なデザインの『ミニ財布』。
私も早速、「デニム淡色」を持って出掛けてみることに。
お札を数枚と小銭、それからカードも何枚か入れて出発です。
普段と同じジーンズ姿。いつもなら鞄に入れる財布を、ジーンズの後ろポケットに入れてみることに。すると、シルエットにもほとんど響かず、綺麗に収まります。
ポケットにすっぽりと入れるのもいいですが、少しだけポケットから覗かせるのもおすすめ。この「デニム淡色」はもちろん、他の作品も素敵な色が揃っており、アクセントになること間違いなしです。
さて、行き先は、わが家から車で15分ほどのところにある和菓子屋さん。お気に入りの「どら焼き」を購入します。そして支払い。
お札と小銭を出したのですが、全くもたつくことがありません。それどころか、普段使用している財布以上に取り出しやすいのには驚きです。
なにより嬉しいのは、持っているだけで心がワクワクすること。デザインであったり、使いやすさであったり、素材であったり、どれもが「出掛ける」ことを気軽にさせ、身軽にさせ、さらに、楽しさをプラスする要素になっています。小銭のチャリチャリという音も、なんだか嬉しく聞こえます。
「次はどこへ出掛けよう」
『ミニ財布』があることで、踏み出す世界が少し広がったような気もします。
SIRUHA創業当初から親しまれてきた、この『ミニ財布』。
その制作数はすでに20,000個にも及ぶそうです。家族や親子で色違いを使っている方もいるとか。誰にとっても使いやすい道具であることの裏付けです。
現在、『ミニ財布』は通販サイト 楽天市場の他、公式ホームページ、工房(毎月第1日曜日の海の校舎開放日のみ訪問可能※の他、倉敷・美観地区の「林源十郎商店」、井原市の「ハジマリニ」で購入可能とのこと。
※「海の校舎 シェアアトリエ」のInstagramで要確認
「自分が何をやりたいのか、どう生きたいのか、誰の役に立ちたいのか。僕自身も、書くことと出掛けることで、いつもそれらと向き合っています。SIRUHAの作品を通して、皆さんにとっても、書く、出掛けるが、より身近な習慣になるようなものづくりを、これからも続けていきたいと思っています」