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2021.11.05 2024/04/11

【神雷の三輪酒造】創業300年の酒蔵が醸す生酛造りの日本酒

生酛仕込みが生み出す!授かる酒「神石高原 生酛純米酒」

今回ご紹介するのは広島県の中東部に位置し岡山県に接する町、神石高原町で305年続く酒蔵、三輪酒造さんの『神石高原 生酛(きもと)純米酒』をご紹介いたします。

三輪酒造の店舗外観写真
歴史を感じる店構えです
伊能忠敬測量隊宿泊邸跡の石碑
日本地図を作ったあの伊能忠敬が泊まったこともあるらしい…!

三輪酒造さんは標高約500mのところにあり、広島県内で一番高いところにある酒蔵です。平均気温が東北地方とほぼ同じという寒冷地のため、お酒の発酵が緩やかに進み雑味が少ない“きれいな飲み口”が特徴です。
全国新酒鑑評会で幾度も金賞を受賞してきた酒名「神雷」を生み出す酒蔵でもあります。

そんな三輪酒造さんで2018年より作られているのが『神石高原 生酛純米酒』です。
江戸時代の伝統的な製造方法である「生酛(きもと)仕込み」で作られたお酒で、この製法で作られたお酒は『授かる酒』といわれるそうです。

神石高原という場所で300年以上続いてきた酒蔵だからこそ生まれる味『神石高原 生酛純米酒』。
一体どんな製法で、どんな想いで作られているのでしょうか?
詳しくご紹介していきます。

自然が生み出す芸術品!ここにしかない奇跡の恵み

現在の酒造りは、「速醸(そくじょう)仕込み」という製法が主流です。
これは明治時代中盤に確立された製法で、人工的に作られた酵母や乳酸菌を用いることにより、短時間で作りたいイメージのお酒をたくさん造ることができる製法です。

一方で、「生酛仕込み」は米と米麹と水のみを使用し、長年続く酒蔵の空気中や蔵の壁、天井などに住み着いている酵母や乳酸菌を自然に取り入れることで日本酒の元である酒母(しゅぼ)を造る昔ながらの天然製法です。

生酛仕込みの様子
高い技術が必要な 「生酛仕込み」
目が離せません

「速醸仕込み」は人工の酵母や乳酸菌が入っているため、腐敗の原因となる菌が繁殖することができないのに対し、「生酛仕込み」は天然の菌によるものなので、腐敗するリスクも高く「速醸仕込み」よりも倍以上の時間と手間がかかり、安定的に作ることが難しいとされています。

そのため明治中期まで酒造りの基盤であった天然由来の「生酛仕込み」は、昭和以降ほとんどの酒蔵さんで衰退していきました。
この「生酛仕込み」で酒造りに失敗してしまうとその蔵に住み着く菌自体が死んでしまい、酒蔵を畳まないといけなくなる可能性もあり、昭和平成の蔵元の世代では禁断の製法として手を出すことが許されなかったそうです。

それでも三輪酒造の美味い酒を考える上でどうしてもこの「生酛仕込み」に心惹かれた15代目蔵元の三輪さんは、現在も「生酛仕込み」をされている広島県三次市にある美和桜酒造の金尾(かなお)杜氏に赴き、指南を仰ぎます。
手間がかかり難易度も高い、伝統技術である「生酛仕込み」。
禁忌(きんき)とされていた背景を知っているがゆえに不安を感じながらも、金尾杜氏の「大船に乗ったつもりで酒を信じていればいい。信じる者は救われる」という言葉を胸に邁進します。

15代目蔵元 三輪さんがインタビューに答える様子
「生酛仕込み」への熱い想いを語ってくださった15代目蔵元 三輪さん

そして2018年、伝統技術の工程を一つ一つ丁寧に信じ製造した結果、三輪酒造さんでの「生酛仕込み」が復活を遂げたのでした。
初めて自分自身で造った「生酛仕込み」の清酒を飲んだ瞬間、この神石高原の自然に溶け込んだような不思議な感覚に陥ったと同時に、『酒造りにおける本質やその神秘性、まさに授かる酒の神髄に触れた!』と直感的に感じたそうです。

自然が育んだ水とこだりの酒米を使用!「神石高原 生酛純米酒」

三輪酒造さんがある場所は寒冷地で酒造りに適した場所にあります。
しかし三輪酒造さんの魅力はそれだけではありません!

清酒成分の80%を占める重要な水は酒蔵裏山にある井戸水からくみ上げる軟水と、酒造の地下50mからくみ上げる中硬水の2種類を使用しています。
2種類の水を使う酒蔵は大変珍しく、この2種類の水を目指したい味に合わせて各工程で使用することにより、より豊かな味わいを作り出しています

さらにお米は広島県産にこだわり、2015年からは自社専用の酒米も生産!
日本酒造りに適した米として知られる「八反錦2号」という品種をたった一握り譲り受け、神石高原町の風土に合った酒米にするべく、種もみから育て増やし、神石高原町の農家さん協力の元、毎年生産をしてもらっています。

『神石高原 生酛純米酒』には、まさにこのお米が使われているのです!!

桝に入った沢山のお米
お酒から香るふくよかなお米の風味の秘密は自社専用の酒米のお陰だったんですね

「蔵人」「水」「米」、神石高原町にこだわってできたのが『神石高原 生酛純米酒』なのです。

クリアで上質な味わい!天然醸造が醸す発酵のハーモニー

「生酛仕込み」のお酒は、「個性、クセがあって少し飲みづらい」と思われている方もいらっしゃると思いますが、そんなことはありません!
歴史ある昔ながらの製法で作られたお酒は、クリアでとても上質な飲み口に仕上がります。

実際に私も『神石高原 生酛純米酒』を購入し飲んでみましたが、日本酒を飲み慣れない私でもすごく飲みやすく、クセは一切感じませんでした。
それどころか、辛口と聞いていた割には“スッキリ”した酸味としっかりした甘さがあり、さらに仕込み水を感じるクリアさは、神石高原町の緑豊かな自然と“キン”とした寒さを感じさせてくれます。

個人的にはとても好きな味でした!
思った以上に飲みやすくて女性は好きかもしれません♡

グラスの中に注がれた神石高原 生酛純米酒
生酛造りのお酒は料理との相性もいいですよ♪
おうち飲みにもオススメです

人口の酵母などを一切入れず米と水のみで作る「生酛仕込み」。その技をみごと地元の米と水で復活させた『神石高原 生酛純米酒』。
天然の製法で人がコントロールできないからこそ、歴史を積み重ねてきた酒蔵の風土や神石高原の気候・味を反映した、三輪酒造さんでしか作れない味わいになっています。

現在、『神石高原 生酛純米酒』は公式ホームページ、広島県東部の酒販店や道の駅「さんわ182ステーション」で購入できます。神石高原町という町を、お酒を通してぜひ感じてくださいね。
また通販サイト 楽天市場では、三輪酒造さんのお酒を販売しています。

実はこの取材当日、広島の酒処である西条の蔵元から譲り受けた木桶が到着!
何と今年は『神石高原 生酛純米酒』がこの木桶で仕込まれるそうです。
これはますます出来上がりが楽しみですね。

新しい木桶が運び込まれている様子
新しい木桶で仕込まれた『神石高原 生酛純米酒』が待ち遠しい!

酒蔵の紹介

三輪酒造株式会社
住所:〒720-1812 広島県神石郡神石高原町油木乙1930番地
電話番号:0847-82-0630

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